推理モノのAVG。
菅野ひろゆき氏の手掛けた”不確定世界の探偵紳士”の続編にあたる作品で、主人公が前作の悪行双麻から今作、八十神かおるに変更されています。

スタッフの名前は伏せられていますが、ライター：菅野ひろゆき、原画：CARNELIAN…ということです。
しかし、実際にプレイしてみると、菅野ひろゆき氏らしくないシナリオ、原画構図はCARNELIANさんらしくない絵です。CARNELIANさんのHPでの過去の日記にはHシーンを描いていないと告白しているため、CARNELIANさん以外の原画家が関与していることは確実です。

シナリオは、猟奇性は皆無（殺人は起こる）で、事件の真相をわずかな材料を手がかりに推理していく……という感じですが、実際は犯人当て、暗号解きのみに的が絞られており、残りの推理は主人公が勝手にやってくれます。また、事件の手がかりとなる材料もひたすら行動するだけです。そのため、同じ場所を行き来するだけで、プレイしていても煩わしさばかりが目立ってしまいます。
０章、１章をプレイした感じは、青山剛昌氏の漫画「名探偵コナン」に似ている感じがします。特に１章のトリックは……そのものという感じです。
２章、３章は…まぁ、少し暴走し過ぎているというか……怪盗、トレジャーハンター、殺し屋という時点で胡散臭さ満点です。というより、こういったものに期待していない分、かなり幻滅してしまいます。純粋に探偵モノ（推理モノ）としてのシナリオを求める人には向いてないシナリオかと思います。
４章は、ミステリート2に続くための布石として用意されたシナリオで、事件としては解決しますが、結局、次作に繋げる布石の部分が多く描かれており、シナリオとしては……弱冠微妙です……。どうせなら、最後までシナリオを完結してほしい…という思いだけが残ります。

ゲーム性については、”不確定世界の探偵紳士”が
・移動するのに時間を消費する
・事件の依頼を受けるのが強制的なイベントでない
というように、ゲームを数回プレイしなければ中々コンプ出来ない…という仕様だったのに対し、今作では、イベントが完全に強制です。そのため、移動を繰り返し、色々と調べていればシナリオは勝手に進行します。移動に際しての時間経過もないので、切羽詰まった行動をしなくても良い……というのは賞賛できます。しかし、そのためにゲーム性が薄れていることは確実です。
今作では、犯人当てというイベントをこなさないといけませんが、事件に関与している人物が非常に少ないということから消去法で選べば、まず間違えることはありません。もし、間違っても、壁紙を集めるイベントがなくなるだけで、事件の進行には影響がありません。また、間違っても途中のセーブデータから再開すれば問題はないです。
残りのゲーム性は暗号解読。暗号解読の大半は、壁紙を集めるイベントに集約されており、実際に必要とされる暗号解読は2章と4章の２つしかありません。また、オマケイベントとメインルートの暗号の解法もほぼ同じなので、暗号解読を結構やらされてる割には単に数をこなしているだけに思います。

絵は、塗りがイマイチです。場面によって、塗りのクセがかなり違います。主人公の絵も…場面によっては絵のタッチが違うように見えました。CARNELIANさんが描いてる…というわりにはお粗末な出来です……。個人的には2章の大部分の絵は突出して別物に見えます。

システム面は、使い難さ満点です。セーブ箇所が5箇所しかない上に、セーブは移動時にしかできない…という仕様です。また、CGモード・回想モードが完備してません。
ボイスはナシ。BGMは当たり障りのない音…という感じです。

プレイした印象は、普通〜良作の中間くらい。悪くはないですが、期待してた程の出来には全然到達してない感じ。まぁ、それだけ期待させられるネームバリューがあるということですが。 推理モノかと思いましたが、物凄い勘違いをしてた模様。”不確定世界の探偵紳士”の続編と思い期待したワケですが、完全に裏切られました。シナリオの方向性も、今後さほど期待できるような終わり方ではなかったのも痛いです……。
プレイ時間は結構長いのですが、ゲームでの移動の煩わしさが常に付き纏います。イベントを発生させるために同じ場所を行ったり来たり……物凄く不毛な操作に思えてなりません。
ボイスなしという仕様はさほど気になりませんでした。が、ゲームの暗号解読は、もう少しバリエーションがあっても良かったように感じました。解法の考え方がどれも同じなら数をこなす意味を感じません。