車輪の国、向日葵の少女
あかべぇそふと つぅ 2005/11/25
シナリオ:るーすぼーい 原画:有葉

特別高等人という職業を目指す主人公。上司から3人のヒロインの監視をするように指令を受けるが……という内容。

シナリオの設定が、かなり独特です。そのため、序盤の部分で少し戸惑います。人の背負った罪に合う義務を罪人に課し、それを高等人が監視する…というフィクション部分にまず戸惑います。この部分の設定が、あまりにも非現実的過ぎるので、初めてプレイする人に抵抗感を感じさせる要因になるかと思います。
内容的には、そういった設定を利用したヒューマンドラマ…といった趣向で、そういった設定を利用しなければ、話そのものが成り立たない…というシナリオ展開にしているのには好感が持てます。場面展開の描写はかなり丁寧にされています。ただ、序盤はそれが弱冠ネックになっていて、逆にテンポが悪く、展開が遅々として進まない…という煩わしさを感じます
物語は、3人のヒロインの更正・監視ということで進行しますが、3人同時ということではなく、1人1人の物語を進行していくカタチになります。そのため、それぞれのシナリオに他ヒロインのイベントが干渉することもなく進行するので、1つ物語に集中してプレイできるという点は好印象です。
各シナリオの序盤は、本題に入る前の雑談…というわけでもないのですが、余計な記述が多く、シナリオ展開のテンポが悪いために日常的なパートに見えます。この部分のパートが余計なため、長々しいシナリオになっています。中盤は後半に繋ぐための布石が敷かれ、後半は…どっちかと言うと感動系の流れで終結します。特に後半の流れは、ヒロインとなるキャラの感情剥き出しの訴えとなる部分が、このゲームのプレイヤーに強く印象付ける展開となり、出来としては良い具合です。
最後は、それまでの3つの物語の部分的なものを掻い摘んだカタチで進行しますが、前の3つの物語から大体予測していた事態になります。シナリオとしては二転三転するような内容ですが、展開に予測がつくようなネタであるため、面白味にかけます。


絵は、かなり酷いです。塗りも酷いですが、キャラクターのデッサンが全体的に崩れているように見えます。また、立ち絵の演出で遠近感を出そうという努力は認めますが、逆に不自然過ぎてそういった演出が反って不要に感じます。良い部分は、キャラの表情がしきりに変わるところでしょうか…。

テキスト送りはノーウェイトに出来ませんが、ストレスを感じるほどではありません。しかし、画像エフェクトが切れないので、場面変化時にストレスを感じます。

ボイスは主人公以外のフルボイス仕様。キャラとの違和感はありません。


プレイした印象は良作ですが、弱冠微妙な部分が多い…という印象を持ちます。
シナリオの大半は共通パートであり、繰り返しプレイはかなりダレます。
良い部分は、各シナリオの後半部分のシナリオの展開です。ドラマ性が強く描写されていますし、プレイヤーの何らかの感情を引き出すような強く訴えかけるメッセージ性を感じます。しかし、そこに至るまでの過程がやや拙い出来に見えます。ハッピーエンドというベストな結果…というより、ベターな結果を描写し、それを犠牲にした上でドラマ性を一番重視した作品…ってところでしょうか。どことなく…不二子不二雄の「笑うせ〜るすマン」に共通している…気もしますが……
シナリオは、弱冠行き当たりばったり…という説明があり、あまり深く考えなければ面白いとは思うのですが、個人的には説得性にかなり欠けていると感じます。特に法月の目的・動機がハッキリしていない(一応、書かれているものの、状況を色々と考えると説得力がありません)…という詰めの甘さを残しているように思います。
この作品の主にダメな部分は
・絵
・立ち絵を使った演出
の2点です。こういった部分がこの作品に対してチープな印象を与えています。同人レベルとしては軽くクリアしていますが、商業である以上金額に見合ったクオリティを維持するべきだと思います。これでは、各シナリオの後半の出来だけがウリになるだけで、それ以外の部分においては…さほど…というレベルですね。
ただ、このブランドの今後の作品には期待が掛かる…という印象は持ちます。クオリティの上げられる課題というのがこのブランドには多い…ということで、それをクリアできれば……なんですが……


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