その横顔を見つめてしまう 〜A profile 完全版〜
あかべぇそふと つぅ 2006/03/24
シナリオ:るーすぼーい 原画:有葉/呉マサヒロ/こんぺいとう

主人公に対して心に蟠りを持つ3人のヒロインの物語……という内容です。

ゲームの序盤は、
(登場人物の自己紹介的な意味合いを持つパートである)何気ない日常生活・学園生活が綴られます。
会話が中心となって話が進み、
簡潔な表現でテンポよくシナリオは進行します。

1日の流れも、朝、昼、放課後、夜…と決まった流れがあり、
こういった部分で序盤から作品の世界観への入り易さ…というのを感じます。
雰囲気としては爽快な感じの日常というのが演出されています。

シナリオの分岐は前半で起こり、
前半からヒロインのルートに突入します。
そのため、共通パートは序盤の部分でしかありません。

ヒロインは3人であり、
内容的には三者三様…というような展開を見せます。
共通点としては、各ヒロインが主人公に対して負い目を持っているということで、
そういった事象がシナリオの核(ネタ)となって描写されていきます。

3つのルートは、ルートによってクオリティの差を感じる部分もあります。
しかし、総じてゲーム中の演出等の作風の雰囲気でゲームの世界観に入り易い
…という印象を持ちます。

エンディングもルートによってクオリティの差を感じます。
大体は予定調和の方向に帰着しますが、
シナリオの後半においては描写が適度に丁寧であったことと、
二転三転するシナリオの展開等から、クリア後の満足感は残ります。

エロは希薄で、ルートのラストに1回だけあります。
内容的には、1回で終わらずに2回戦突入というパターンのため、
シーンを通してみれば長いようにも思います。
しかし、作品全体の流れから見てシナリオ重視作品でエロはオマケ的な位置づけと見るのが良いでしょう。


絵は、ゲンガーによって絵のタッチが明らかに違う…というのに戸惑います。
ゲンガーを1人…というのを強要するつもりは毛頭ありませんが、
もう少し統一感ある絵柄にする努力を見せて欲しいです。
こういった部分でチープな作品の印象を受けてしまいます。
ちなみに個人的には、どの絵も上手い絵には見えません。
塗りは標準レベル…という感じですが、立ち絵の塗りはあまり美麗に見えません。
1枚絵の表示はそこそこされていますが、
日常的な部分では使い回し…という傾向が強いです。 立ち絵は、2アングルのそれぞれ2パターンのバリエーション。
そして表情違い…という感じで、バリエーション的には豊富に思います。

システム面はさほど不満は感じません。
個人的にはもう少しフォントサイズを大きくして欲しいです。
ウィンドウモードでは文字が小さいので読み難いです。

ボイスは、主人公以外のフルボイス仕様です。
BGMは作風に合っているという印象です。


プレイした印象は、良作一歩手前〜普通の出来…という感じです。

細かい部分を気にせず、何も考えずにテキストを読んでいけば結構面白い作品だと思いますが、
登場人物の相関関係やその心理状態を気にしながらプレイしてしまうと、やや粗が目立ってしまいます。
シナリオのネタの最終的な結果だけを見れば、面白い内容です。
ルートによっては、二転三転するシナリオ展開だったり、
ドラマ性が演出されていたり…となっています。
しかし、そこに至る過程の(繋ぎの部分においての)展開が強引なシナリオ進行です。
この部分に納得できるか、できないか
…で評価が分かれそうな内容に思います。

シナリオは、前半でヒロインルートに分岐している仕様
…というのは好感が持てます。
共通パートが少なく、最初から繰り返しプレイしてもダレることはありませんでした。

シナリオ進行のテンポも、
前半では軽快に進み、ヒロインルートに乗った後でも軽快です。
しかし、ネタが明らかになってくるラスト周辺になると適度に丁寧になる
…という具合です。
そのため、全体として軽快なテンポで進むという印象を残しながらも、
シナリオが重視されている作品だと認識させられます。
また、こういったラストのシナリオ描写は、
制作側がゲームの見せ場となる部分をわきまえている作り
…とも言えます。

このゲームの場合、
こういった見せ場をプレイヤーに如何に伝えられるかがキーポイントであるため、
ラスト周辺のシナリオ描写としては上手い…と感じます。

値段的な部分を考慮すれば、シナリオ重視作品と見てもそこそこ満足感の残る内容でした。
エロは希薄であるため、エロを重視する人には全く向かない内容です。
また、単純な恋愛AVGを期待する人にも向きません。



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以下、日記からのログです。ネタバレの可能性あり

2006/04/02
「その横顔を見つめてしまう 〜A profile 完全版〜」やってます……

面白いかどうか…ですけど、「車輪〜」同様、何も考えずにテキストを読んでいけば面白いと思います。

私的に物凄く気になるのは、登場人物の気持ちの変化がやたらと不自然極まりない。
葉山莉寿のルートが終了しましたが、

〜〜葉山莉寿ルート総括〜〜

葉山莉寿の気持ちの変遷がおかしいですね。
それに伴って、主人公の気持ちの変遷もおかしいです。
一度思ったことは、それを貫き通す…と表現すればいいのかなぁ??
気持ち的な部分が極端に偏っていて、

→主人公、過去は荒れていた性格。勿論、義妹の存在もウザイ。
→父親も義妹の存在がウザイ。しかし、なぜか主人公は義妹を助ける(←オカシイ……)
→父親、半年後に死ぬ。死に際、なぜか義妹を頼むと言い残す(←オカシイ……)
→義妹、荒れてる兄が嫌い。実兄のリョウは好き。でも、主人公が倒れると救急車を呼ぶ(←オカシイ…)
→主人公退院後、義妹を気にしている(←まぁ、父親の遺言と思えば…なんですけど、主人公って父親を全然慕っていないので、この気持ちの変遷も不自然に見える…)
→義妹、退院してきた主人公を即座に刺す(←じゃぁ何で以前に救急車呼ぶ?)

その後……予想通りの展開に微笑ましく思った(苦笑
まぁ、伏線を多く張ってくれたおかげで、ネタがすぐにわかるよね…さすがに。一番、アレだったのは、あの人が女だったことぐらいで、それ以外は犯人庇ってるのも予想通りだったし。
こういった二転三転する展開はすぐ読めますよ。でも、逆に言えば伏線を多く落としてくれていることに好感を持ちます。
しかし、主人公は携帯電話で犯人を知っていることを考えれば、ああいう展開はよろしくない。
二転三転する展開に持ち込むために、常識的なシナリオの展開にはなっていない。これが、このシナリオにおける最低の部分です。つーか、主人公の心理状態を偽ってプレイヤーを騙すの止めようよ……。せっかく伏線を張っても肝心な部分で常識的に考えればオカシイよ?

そして……最終的に義妹って、人間として最低と思うが?
それを受け入れる主人公って一体?
荒れてる性格から一変して、曲がった事が嫌い?
なら義妹の性格は曲がり過ぎだと思うが?
義母も、妹を守る男として評するけど、こんな妹を守って男と言われたいのかなぁ…?
それと、主人公は妹としての存在を強調してただけに、それを突き崩すような葉山莉寿に対する思いがどこから来ているのか不明。なんかいつの間にかエロシーン描写されて終わってしまった。

ということで、あまり深くは考えずにプレイすることが吉。
イベント自体は次々に起こるので、そういった部分には好感は持てます。
ただ、イベントを起こすために登場人物の気持ちの持ち方が強引に変わって行く…ということが気になるだけ。まぁ、その場限りの気持ちの持ちよう…ということで割り切ってプレイすれば、面白いシナリオの分野に入るかと思います。

このライターに決定的に欠けている部分は、読み手を納得させる説得力に欠けている…ということ。
おそらく、イベント重視でシナリオを書いているので、肝心の登場人物にあまり気を使っていない…という印象を受けました。だから、シナリオの展開としては結構秀逸の部類に入ると思います。起承転結もあるし、展開に起伏があるところとか。

同人だったら満足できるけど、これで商業はね……
まぁ、価格的な部分を考慮すれば、良作一歩手前…ってところでしょうか…甘いかも(汗
〜〜小野未来ルートネタバレ総括〜〜

葉山莉寿ルートでは、伏線が張られまくりのシナリオでしたが、今回のルートは明らかに伏線となる部分がなく、テキストを読むのにも作業的になってしまいます。展開は起伏がなく、起承転結もあると思う人もいれば、ないと思う人もいるかと思います。

このルートでは、ルートに入ってから明らかに不自然な程、二重人格者…という部分を臭わす展開になります。
私も、最初はヒロインが二重人格者を疑わざる得ない状況だったこともあり信じましたが、平田快音の(二重人格者であるはずがない…という)発言と、病気を煩っている…という部分でラストの展開が読めました。
まぁ、元の性格が思っていたのとは逆でしたけどね。
このルートの展開は、陸上競技と絡めた展開になります。ただ、エンディングを迎えても、こういった陸上競技と主人公を結びつける部分がまだまだ弱い気がします。主人公は昔同じ陸上競技者だったわけですが、やはりルートに入った直後に起こった、小野未来の正体の方がインパクトが強い…という部分もあり、何だかシナリオが単に冗長されてるだけのように思います。

感動も何もなく、淡々と終わってしまいましたね…
まぁ、主人公とヒロインの心理状態の変遷は、葉山莉寿ルートのような不自然さはあまり感じませんでしたが、逆に普通の出来で印象に残りません。

敢えて不自然な部分を挙げると
・小野未来が嫌い、しかし夏恋は好き。けど、同一人物…
というシナリオ上での演出をするために、主人公が一方的に小野未来を嫌いになるんだけど、
私から言わせて貰うと、「そんなんで毛嫌いになる程の理由になるのか?」という納得できない展開が待ち構えています。

気になったのは、これぐらいです。これを華麗にスルーしてもシナリオ的には普通だという印象です。
正直に書くとダレました。
面白くなかったです。

2006/04/04
「その横顔を見つめてしまう 〜A profile 完全版〜」終了しました。

〜〜相馬美桜ルート総括〜〜
過去、葉山莉寿に主人公を取られてしまった経緯を持つ。
そして、自分の弱さを表現して他人を悦ばすのに快感を覚え、ウリを始めるようになる。
主人公に対しても、中々自分の本心を見せない相馬美桜が主人公と接している内に段々と自分の本心を曝け出していくようになる…というのがこのシナリオの見せ場になります。

主人公は嘘をつく相馬美桜に愛想を尽かすが、クラスメイトの相馬美桜に対する批難に堪えかねて、それでも相馬美桜が好きだと気付く(←こういった動機付けは良い…と感じた部分です)。
相馬美桜はウリをやっているという負い目から主人公が好きだということを隠し通そうとするが、徐々に本心を曝け出してしまう…
その後、一転したシナリオ展開を見せるが、最終的には予定通りのハッピーエンドに帰着しました。

このシナリオは素直に面白いと思います。プレイ後の満足感もそこそこ得られました。
「車輪〜」で感じられたドラマ性もようやくこのシナリオで感じ取ることが出来ました。
相馬美桜の本心がどこにあるのか…という部分でラストに見せ場をもう1回持ってきている事が良い感じですね。

最初の見せ場は、クラスメイトに批難された直後〜屋上
次は、エロシーン直前
次が、ラスト

という具合です。
ただ、やはり気持ち的な部分でやや疑問に思う部分もあります。私は、エロシーン直前の相馬美桜の独白は、かなりの本心を曝していたと思うんですが、その後の展開で、「アレ?」ってなりますね……

まぁ、その分を差し引いても大して批難するべき要因にもならないです。

ルート別評価は、
葉山莉寿ルート(7点)→ 菅野ひろゆき氏の手法を劣化させた感じのシナリオ
小野未来ルート(3点)→ 極々普通のシナリオで飽きる
相馬美桜ルート(8点)→ 一番楽しめた。

かな……。平均すると6点ですが、1ルートを最初から最後までを通しでプレイすると悪くはない出来だということ、そして価格的な部分を考慮して7点、あるいは8点でもいいかな…と思います。
現状、3/24作品では1番楽しめたことは確かです。

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