あまなつ
チュアブルソフト 2006/06/23
プロデューサー:セバス 制作総指揮: 草壁よしお/セバス
シナリオ: 草壁よしお/師がない弟子/森崎亮人/大竹雅樹/阿羅本景 原画:ぎん太

海、夏を強調した純愛系AVG。

祖母の住んでいる海辺の街・海部ヶ瀬へ9年振りに戻ってきた主人公。
そして祖母の民宿から学園へ通うことに……

という流れで始まります。
民宿には、明るく、快活な従妹の綾瀬真魚が住んでおり、
学園に行くと、シスターのソフィア・由花莉・三島、
大人しいお嬢様の御薗木桜子、
ツンデレの風見涼夏、
というようなヒロインとの交流が描かれていきます。

一方でシナリオは、
海辺の街・海部ヶ瀬で起こる奇怪な現象である「誘火」。
伝承として残る「人魚」。
そして、「人魚」の伝説と交えて司祭フェリシアを称える祭「翠鱗祭」。
とうようなこの作品の核となる話が徐々に描かれていきます。

前半のヒロインとの交流は淡白であり、
これはルートに乗ってからの描写になります。
また、シナリオのネタも前半部分ではあまり詳しく描かれないことから、
シナリオの重点部分は後半に集中していると言えます。

基本的には純愛系の恋愛ストーリーですが、
どちらかと言うと、比重がシナリオのネタの部分に重点が置かれており、
ヒロインとの関係はやや淡白な傾向があります。
ただし、これはルートによって傾向が違いますので一概には言えない要因です。

シナリオの核となる部分がどのルートにも共通して描かれており、
全ルートを通して作品としての一体感を感じさせる内容です。

作品としては、単純に恋愛の過程や、ヒロインと付き合っていく…
というような内容を望む人には向かないかもしれません。
しかし、ある出来事を通してヒロインと強い繋がりを描くストーリーですので、
そういったモノを望む人には向いているでしょう。

エロは、オマケです。
ヒロインルートの後半、あるいはラスト付近です。
回数は2〜3(?)回ぐらいですし、
シーンによっては、尻切れした感じの中途半端な感じを受けるものもありますので、
期待しない方が無難でしょう。

絵は、基本的にCG枚数が少なく、
イベント1枚絵は使いまわしの傾向があります。
立ち絵は、ヒロインで3アングルの弱冠のポーズ違いですが、
主に使われているのは2アングルぐらいです。立ち絵自体は普通の変化…という感じです。
立ち絵の変化が大きく変わるのは良いのですが、
塗りは、白と原色(特に赤と青)を基調としている配色のため、
目がチラつきますが、キャラが際立って良い感じです。
背景は、全体的に塗りがイマイチです。上手いモノもありますが、下手のものとギャップを大きく感じます。

システム面は、
演出が消せる項目があるものの、画像が瞬間表示されていません。
立ち絵の表情やポーズが変わるときに、弱冠のレスポンスの悪さを感じます。

ボイスは主人公以外という仕様です。
BGMは当たり障りのない音。

プレイした印象は、
良くもなく、悪くもなく…という感じ。

文章自体は普通ですが、テンポがやや悪い感じです。
イベントの前後関係がしっかりと作られている流れですが、
やや冗長されている傾向があり、こういった部分で不要なパートをダラダラと読まされている感じです。
そのため、ルートに乗ってもシナリオの世界観に惹きこまれる事がなく、
逆にダラダラと進行しているだけ…という印象です。
イベントもルートに乗った後のラストの部分しか展開しない…という傾向で、
結局はシナリオのネタの部分の前フリが異常に長いだけ…という作品です。

シナリオは、恋愛的な部分が薄く、
メインヒロインの綾瀬真魚以外は、ほとんど恋愛的な展開へベクトルが向いていません。
シナリオとして、「人魚」「翠鱗祭」「誘火」に拘ったという部分は全ルートに共通しており、
そういった意味では作品全体を通しての一体感、説得性は感じられるものの、
肝心の個別ルートで恋愛的な部分が疎かになったせいで、
主人公とヒロインが結ばれる動機が薄いと感じます。

作品としては、恋愛部分以外でのシナリオのネタを上手く作っていたことが好印象でした。
これが、どのルートにも一貫して反映されています。
また、主人公の過去の出来事が綾瀬真魚との「人魚の呪い」だけに留まらなかったという部分が上手く作用していると思います。

惜しむは、ダラダラとした部分さえなければ…と思います。
これでは、プレイするにも集中力が切れてしまいますし、
作品の世界観にも中々溶け込めません。


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以下、日記からのログです。ネタバレの可能性あり

2006/07/15
「あまなつ」

街に残る伝承。「人魚」「翠鱗祭」「誘火」
「誘火」は9年ごとに見られる現象で、8/10に見られる
「人魚」の伝説。昔、人魚に見初められた若者の話。
「誘火」の日に人魚に連れられて去ってしまった

しかし、これは
過去の綾瀬真魚の父親である太一の話
太一は、人魚に助けてもらった。
人魚の話の若者は太一のこと
そして「誘火」に導かれて去ったが、
幼子を連れて再び戻ってきていた。
「誘火」は離れ離れになった夫と娘に呼びかけている

そして9年前、母親と、真魚が病気に。
人魚の呪いで、病気ではない。
それを助けるために主人公が犠牲になろうとするが、
結局太一が犠牲となり、真魚だけが助かった

桜子ルート

主人公へ兄の面影を見ている桜子
主人公を「兄様」と呼び、慕う。
綾瀬真魚の計らいで、桜子と付き合うことになるが、
桜子は桜子のお兄さんを主人公に重ねているだけで、
主人公はそんな桜子の気持ちに応えることは出来ない。
主人公は、主人公で桜子の兄に嫉妬している。

そんな時、桜子がかつての人魚の呪いにかかってしまった。
で、かつて人魚の呪いで何も力になれなかった主人公は……

…という流れ。

ウ〜〜ン…
普通かな。
良くもなく悪くもなく。
全体的なバランスが悪く思いました。
前半の流れにおいて、恋愛系の話に傾くようには感じなかったが、
やはりというか……恋愛的な部分の描写が弱い。
主人公の気持ち…という部分が物凄く弱く、
桜子を好きになった動機はみつからない。

まぁ、ラスト周辺の人魚の呪いの部分の話の流れは良かったけど、
結局、昔に主人公自身が真魚を助けられなかった…という部分から来てるんだよね…
相手が真魚だったら、別段不自然ではないけど、
シナリオの実際は桜子だから。
「あまなつ」

近藤春雨ルート

育ての父親の遺言で久世島に来たはるさめ。
そこで、ある人物に手紙を渡すことが目的だった。

はるさめの荷物を取りに久世島へ来た主人公と、はるさめ。
そして、そこで結ばれる。

街に戻った二人は、厳太に出会う。
はるさめが目的としていた人物は厳太だった。

そして、はるさめは厳太の養子になり街を離れることに……

という流れ。

まぁ、別れを演出するための展開が色々と…という感じかな。
別段悪くはなかったけど、不要なパートがチラホラ感じられる。
はるさめの自由奔放な性格を描くには十分だったかもしれないが、
私はダレた。
日数的な部分からは飛び飛びになってるけど、
結局必要な部分と言うのは少ない。
そういった部分で冗長されていると感じるし、内容的に惹かれる部分があるかというと、そうではないと思う。

最終的に別れ…という部分が強調されており、
私には、主人公とヒロインが結ばれる動機が希薄に感じた。
どことなく、何気にエッチしている内に……
という感じでしかない。
最初は、主人公にとってウザイ存在でしかなかったはるさめが、
最終的には好きだという部分に到達する変遷はすごいと思うが、
そういった部分での気持ちの変遷をもっと上手く描写するべきであろうと思う。

でも、最後の部分は悪くはなかったよ。両方とも。
何か、昔のアニメとかにあったような予定調和な展開だけど、
それが判っていながらでも良いね。
まぁ、ラストだけだけど……
「あまなつ」

ソフィア・由花莉・三島ルート

シスターであるソフィア。
神に仕える身ということで、主人公の気持ちに中々答えることが出来ない。
そこで、神父はお互いの気持ちがあれば…とアドバイスするが、
恋人同士の関係に中々踏み込めない

そして…誘火の日に…

という流れ。
ウ〜〜ン…あんまり面白くなかったかな。
主人公がソフィアを好きだという気持ちはわかったが、それのきっかけとなる動機が薄い。
ソフィアの方も、主人公を好きだという理屈付けが弱い。
いつの間にか、2人が意識しあう関係になっていて、
それでソフィアがシスターという立場に悩んでいる…という流れが描写されているだけだった。

まぁ、決定的に悪くはなかったけど、惹かれる要素がなかったかな。
どっちかというと退屈だった。

2006/07/17
「あまなつ」

風見涼夏ルート

9年前、主人公と遊んでいた頃に現れた桜子。
2人の世界が3人になり、桜子を人魚の呪いで消えるように願う。
しかし、結果は桜子も去ったが、主人公も目の前から去ってしまった。

9年経ち、主人公が再び目の前に現れる。
しかし、自分の気持ちを中々表現できない涼夏は、思いと行動が逆になってしまう。

色々あり、主人公と涼夏が付き合うことになる。
しかし、桜子と主人公の関係にまだ決着が付いていない。

そんな中で、主人公と涼夏は保健室で結ばれるが…その場に桜子が。

桜子はその後、体調を崩し、悪い方向に。
これが、9年前の人魚の呪いではないかと思う涼夏だが……

という流れ。
シナリオ的には悪くはないけど、
あまり恋愛という方向にはベクトルが向いていない。
また、シナリオといっても、起伏があまりないから、ダラダラとした感じは残る。
このルートは、涼夏の独占欲がよく表現されているのがよい感じ。
桜子、涼夏、主人公という三角関係。
涼夏、主人公は付き合っているのに、涼夏は桜子に主人公を取られるのではないか…という猜疑心を持っている。
それが、保健室での桜子に対する逆ギレに繋がっているのだけど、
こういった部分の人間関係は良いと思うよ。

ただ、もうちょっと作品に惹かれるような要素が欲しいね。
不要なパートはあるし、全体的にムダに冗長されている感じ。

あと、話的には桜子が絡み過ぎ。
これでは単なるオマケというようなルートの位置付けにしか思えない。
もう少し、主人公と涼夏のお互いの気持ちが描写されていれば……と思う。
「あまなつ」

綾瀬真魚ルート

このゲームで一番マトモな恋愛系の話。
お互いの気持ちは上手く描かれている。

しかし、途中で真魚が主人公の考えを否定する展開は意味不明。
これが、ラストの誘火の部分にも直結しているのだが、
この辺で真魚の考え方にやや疑問が残る。
展開的に誘火の現象のときに死んだ父親と絡めた展開に持って行きたかったのだろうが、
アプローチの仕方が露骨過ぎというか……もっと上手く展開して欲しかった。
これでは真魚の考え方自体に疑問が残るし、突発的過ぎるというか納得できない部分だった。

でも、このルートが一番面白かったけどね。
ネタの部分の絡め方がイマイチだっただけで、
お互いが付き合っていく過程は上手く描かれていた。
ただ、それがエロビデオ鑑賞がきっかけになっていたのは……(笑

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