偽りの教室
DarkSide 2005/11/11
シナリオ:永沢壱朗 原画:村上真

学園で虐められていた従妹を助けようとし、クラスメイト・矢島しのぶを殺してしまう。そして、何とか隠し通そうとするが……という話。

序盤では従妹・中村悠里が虐められているところから描写され、そして主人公と中村悠里が虐めの鍵を握る矢島しのぶを偶然に殺してしまうことから始まりますが、実際のシナリオの核となるのは「人を殺してしまった」という焦燥感や恐怖感という心理的なものを中心に上手く描写した展開になります。
主人公は矢島しのぶを殺してしまったことに対して焦るものの結局は冷静に判断しますが、従妹の中村悠里は恐怖感から発狂する程の態度になり、こういった対照的な2人を通して上手くシナリオを展開させる内容になります。
矢島しのぶを殺してしまったということを隠し通そうとする主人公に対して、冷静になれない従妹。中村悠里の虐めを黙認し、主人公に思いをよせる○○。殺された矢島しのぶの友人であり、勘違いな正義感に燃える金子ふみえ。そして、その事件の現場を目撃し利用した○○に、更に一部始終を目撃しその顛末がどうなるかを観察する○○……というように各登場人物の目的・役割がかなりハッキリしています。そして予定調和で都合の良いシナリオ展開にはならずに、常に最悪の事態の方向へシナリオを展開させるというシナリオのため、次の展開がどのようになるのか……というようにプレイヤーに興味を惹かせる手法が上手く感じます。
エンディングを迎えると、シナリオのネタがほとんどバレてしまいますが、エンディングを見ることによって、主人公以外の視点から見たこの事件のあらましが追加される…という手法を用いています。自動で視点が切り替わるザッピングシステムのようなものですが、こういった部分を見ることによって、更に事件の全貌がわかってくる…という仕様なので、ある程度の複数回プレイを前提とした作りにはなっています。
エンディングは完全なハッピーエンドというものがなく、鬱展開ではないですが…何かしら心に引っかかるもどかしさは残ります。


絵は、塗りが手抜きで、美麗に見えません。立ち絵は、表情は変わりますがメッセージ内容に合わせて頻繁に変わることはありません。ほとんど変化すら感じません。表情のバリエーションすら少ないような感じを受けます。立ち絵は1ポーズのみということで、立ち絵+テキスト処理だとビジュアル的に変化の乏しい作品です。
1枚絵は実線が強調されていて塗りもコントラストがキツく、クセがあります。1枚絵の表示はゲーム全体を通しても少なく感じます。エロ絵中心でイベント絵は少なく、1枚絵の必要な部分にCGがなく、テキスト+立ち絵が中心の進行になります。

フォントの大きさに問題はありませんが、メッセージウィンドウの透過度を変更してもウィンドウが透過していて少し文字が読み難いです。
テキスト送りは、問題はありません。この辺は快適にプレイできました。

BGMは作風に合っているという印象です。
ボイスは女性のみで、キャラに合っているという印象。しかし、一部のキャラはお世辞にも上手いとは思えません。


プレイした印象は、良作です。
ただし、ビジュアル面はかなりダメな領域に入るので、そういった部分を気にする人には向きません。しかし、シナリオは良質でした。内容的にさほど珍しさというものは感じませんが、各登場人物の目的がハッキリしており、また心理描写も上手く出来ているというところから、作品の世界観に入り易い…という印象を受けました。描写は適度に丁寧で、回りくどい表現もなく読み易い文章でした。また、場面展開も適度に緊張感が保たれ、主人公達が次にどのような境遇に遭うのか…ということをプレイヤーに考えさせるというような(シナリオライターの)誘導の仕方がひじょうに上手いという印象を持ちます。
勿体無いのはやはりビジュアル面全体。立ち絵、1枚絵、そして演出…と散々のクオリティです。この辺を上手く整備していけば、もっとアピールできる内容だとは思いますが…残念です。
作風が暗いので、そういったものが嫌いな人には向きません。また、エンディングでハッピーエンドに期待する人にも向きません。それと純愛系とは掛け離れた内容です。
ミステリー系とも違いますが、そういった緊張感は作品にありますので、その手の内容が好きな人には向いているかも…しれません…。


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