かいわれっ!
FlyingShine 2006/07/28
企画・プロデューサー:黒川孝幸(smart) ディレクター:原マコ
シナリオ:神堂劾 キャラクターデザイン・原画:鮭

主人公を含む仲間4人(男2人、女2人)内で、人格が順番に入れ替わっていき、
その先に待ち受ける運命は……という内容の学園系AVG。

旧校舎に部室を置くコミュニケーション研究会。
そこのメンバーが
堀添凛
柴森海音
國枝優真
越中忠文
です。

いつも変わらない日常、普通の生活がいつまで続くのか…
こういった刺激のない日常に、主人公である國枝優真は疑問を抱くようになる。
しかし、そう思う矢先に起こったイレギュラーな出来事、
つまりは、この作品のメインとなる設定の”四人の少年少女の魂は入れ替わってしまう”という事態が発生します。

初めは異性の身体の違和感、
そして何も違う男女の世界観が綴られていきます。

また、どうすれば元の身体に戻れるのか…
そして、毎日同じ時間に部室内で”魂の入れ替わり”が発生することに気付きます。
しかし、こういった不思議な現象の影響がはかり知れないばかりに、
毎日”魂の入れ替わり”の運命を受け入れていきます。

作風は、設定的にドタバタ系…のように見えますが、
どちらかと言うとシリアスな路線であり、
主人公があっけらかんとした性格の割には、
楽しい雰囲気、明るい雰囲気…というのは伝わってきません。
コメディ的な要素も皆無であり、登場人物の会話のやりとりはシナリオ上のことがほとんどになります。

物語は、
同じ日常の繰り返しを望まなかった4人の胸の内、
あるいは過去・現在においての心の傷を
”魂の入れ替わり”というイベントを通して描かれていきます。
あるいは”魂の入れ替わり”という設定を上手く利用して、
登場人物たちの胸の内を上手く表現している作品と言えるでしょう。
主人公は、友達と思っていた3人について、
全く知らなかった一面、あるいは置かれている状況を知ることになります。
そして、そういった登場人物たちの悩みの解決を図っていく…
というのがこの作品の趣旨となります。

Hシーンは1ルートに1シーンしかありません。
描写的に特に優れていることもなく、
オマケという位置付けでしょう。

絵は、キャラクターのデザインが丸味を帯びていて好みが分かれるかと思います。
塗りは、全体的に黄色が強調されているような塗りです。
1枚絵はイベント絵が中心ですが、さほど頻繁に表示されている印象はありません
。 立ち絵は、1アングル固定で、ポーズ違いが3〜4種…というところでしょうか?
立ち絵は主人公の立ち絵が頻繁に表示されるので、
こういった部分に違和感があるのですが、
設定上”入れ替わり”ということで仕方のないことです。
それと、立ち絵が大きく表示されているのも気になります。
画面に2人分表示されると、画面が立ち絵で埋まってしまった…
という印象を受けてしまいます。

システム面は、特に不満は感じません。

ボイスは、主人公を含む主要人物のみ…です。
BGMは、当たり障りのない音。

プレイした印象は、
悪くはなかったのですが、面白くもなかったです。

序盤では丁寧だった描写は、後半になるに連れて端折られる傾向があります。
これは各々の場面における描写は丁寧なのですが、
場面と場面を結ぶ部分に丁寧さがありません。
流れ的に知っていて当然のこととしてシナリオが進行する傾向があります。
そのため、後半になるほど場面が端折られています。

しかし、シナリオの流れは良い感じだと思います。
恋愛的な要素は薄いものの、登場キャラの心理的な部分はよく描かれていますし、
ヒロインと結ばれるのも自然な流れであるために、
ある程度順序立てた経緯というものも感じます。
ただ、シナリオにメリハリがなく、
結局最後まで盛り上がりのない展開のまま終結してしまいました。

題材的に面白いネタだとは思いますし、
それを上手く活かした展開にもなってはいますが、
エンディングまでプレイしても物足りなさ……というものを感じます。
また、後半は展開的にどういったことになるのかはすぐに読めてしまうこともありますし、
結果のまとめ方が上手くとも、
大して印象に残るほどのものがありません。

前半で”入れ替わり”という大々的な設定を強調したにもかかわらず、
後半の流れはジンマリとした印象を受けてしまいます。

個人的には、コメディ、あるいはドタバタ系…という勢いで進行するシナリオの流れであったなら、
まだ面白いと感じれただろうと思いますが、
こういったシリアスに展開するのであれば、
もう少しシナリオに二転三転するようなシナリオの展開を用意して欲しかったと思います。


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以下、日記からのログです。ネタバレの可能性あり

2006/08/05
「かいわれっ!」

堀添凛ルート総括

クラスでも目立つ存在の堀添凛。
しかし、それが災いし、他の女子からイジメを受けている。
だが、堀添凛自身は自分が強い人間として、そのことを他の人に相談しようとしない。
更に、親との確執……

それらの鬱憤が溜まり、堀添凛自身が入れ替わりを望んでいる。

コミュニケーション研究会の部室で起こる人格の入れ替わり
それを堀添凛自身は望んでいた。
旧校舎にあるコミュニケーション研究会は、取り壊しの話が持ち上がっており、
堀添凛はそれを頑なに拒んでいる。
コミュニケーション研究会がなくなることより、
堀添凛には入れ替わりがなくなることを恐れていた。

一方で、度重なる入れ替わりによって、
堀添凛の置かれている状況をそれとなく察知していくコミュニケーション研究会の部員達。
堀添凛を何とか助けようと尽力を尽くす。
だが、堀添凛の精神が段々と病んでいた。
入れ替わりによって、堀添凛の記憶が都合の良いように捻じ曲がっていたのだ。
そして、コミュニケーション研究会の部員達はこれ以上の入れ替わりは危険だとするものの、
今の自分に強い変化を求めている堀添凛には納得が出来ない。

主人公は、堀添凛の記憶がおかしいことを指摘し、告白。
堀添凛はそれを受け入れる。
堀添凛の病んでいた心は晴れる。これ以上の入れ替わりがおこることも望まなくなった。
だが、入れ替わり自体はまだ存続していた……

で、旧校舎の取り壊しが決定されるものの、
元の姿にもどっていないコミュニケーション研究会の部員達は
取り壊し寸前の部室で篭城を……

シナリオ的には良い感じだと思う。
恋愛的な説得性も自然な流れだろう。
主人公は、堀添凛のことを常に心配し、そして尽力を尽くした。
それは他の部員達にも一目置かれるような状況だった。

入れ替わりの部分でも、それを上手く利用したシナリオになっている。
シナリオの趣旨を最後まで利用した内容だ。
また、入れ替わりによって相手の知らなかった一面が表面化してそれを解決に向かわせる…
というものなので、題材的にもそうなるのが自然だと思う。

ただ…ただなぁ……
決定的な面白さがないんだよね。
イジメといっても露骨なまでのものがないし、
入れ替わりにしても、全員が是が非でも元の状態に戻ろう…という意思が感じられない。
結局、シナリオにメリハリがないまま最後まで突き進んでしまった…という感じ。
起承転結にしても「転」の部分が弱い。
ただ、「結」の部分は上手くまとめられていると思う。
「かいわれっ!」

柴森海音ルート総括

昔、イジメを受けていた柴森海音。
それを知った堀添凛が柴森海音を助ける。それをきっかけとして、イジメのターゲットが堀添凛に向いてしまった。
柴森海音は堀添凛に助けられたことには感謝をしているし、負い目を感じている。

入れ替わりを続けていたコミュニケーション研究会の部員達は、
感情のコントロールに影響が出始めていた。

そんな折、堀添凛は、柴森海音に構い続け…
ついには柴森海音はそれがイヤになってしまい、とうとう堀添凛に怒りをぶつけてしまった。
柴森海音は堀添凛と國枝優真がいてさえくれればいいと思っていたのに、
反抗してしまった…ことで後悔をした……
柴森海音は、それを主人公に相談し、拠り所を主人公に求めた。

一方で、堀添凛に対するイジメが表面化してくる。
強い意志を持つと思われていた堀添凛はそれに耐えられず、遂に……

ウ〜〜ン……
これも決定的な面白さがないかな……
シナリオの説得性という部分ではさほど気にならないんだけど、
やはりメリハリがないからかな?
登場人物たちの心理的な部分は上手く描かれているんだけどね……
「かいわれっ!」

越中忠文ルート

性同一性障害のようなシナリオかな…
越中忠文は双子の姉が一緒に生まれるはずだった。
しかし、母親は身体が弱く、越中忠文だけが生まれてきた

越中忠文は、身体は自分のものだが心は姉のものだと言う……

そして、起こった入れ替わりという事態。
越中忠文は、本当は女性の身体…に依存したかったのだ…と。

一方で、精神が死んでいる百合川真冬。彼女は、その身体に宿る魂を探していた。
”入れ替わり”を知った百合川真冬は……

という流れ。
シナリオは分岐。
片方が越中忠文のルートで、もう片方が百合川真冬…だけど、どっちも越中忠文が関係する。

面白いかどうか…だと、普通のデキかな…という程度。
ネタ的に驚愕するほどの面白さはないし、
展開的にも、さほど起伏のないまま終わってしまう。
まぁ、シナリオは読めるほうかな…とは思うけどね……

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