草原に塔が建っている街に戻ってきた主人公。子供時代の忘れていた記憶の意味は…という話

普通の純愛系恋愛シナリオに、やや非現実的な設定（魔法とか…）を加えたAVGです。この設定は、主人公の子供時代に関わったヒロインにだけ関係している事象であるため、そのヒロインのルートから逸れると、ただの恋愛AVGです。
序盤は、エロゲのよくある展開で始まります（両親が海外転勤。そのため、主人公は生まれ故郷の親戚の家に）
シナリオ自体は、魔法の存在を信じる春日野陽菜を中心として、日常的な学園生活が描かれます。登場キャラはクセのある個性を前面的に押し出しており、そういった部分で日常的な会話でも飽きさせない作りになっている…という強みのあるシナリオです。雰囲気的には、ドタバタ系・ギャグ系…とまでは行きませんが、何気なしにまだ笑える雰囲気を持った作風です。ただ、決定的な面白さという部分があるかというと、そうではありません。
シナリオ展開としては、春日野陽菜ルート、翼美羽ルートで一貫したシナリオ設定を背景としていて仕上がりとしては良い感じです。両ルートともに子供時代の記憶がキーポイントになっており、一見矛盾があるように見えますがエンディングを迎えればそれが一貫したシナリオ設定に起因するもので、説明的には辻褄が合います。また、記憶に関して通常疑問に思われる部分は、両ルート中に答えが全て書かれているということを考えれば、しっかりとシナリオ設定に沿って書かれたシナリオ展開だということが判ります。
エンディング自体は、予定調和な部分もありますが、基本的にヒロインと主人公の前向きな姿勢が描かれて終結します。
それ以外のルートは、どちらかと言うとオマケのようなシナリオです。シナリオ設定は、序盤の設定が完全に不要です。一応、雲谷千鶴ルートでは弱冠関係する部分もありますが、設定自体がなくても十分成り立ってしまいます。どのルートも意外性はなく、順調にヒロインと結ばれて終わってしまいます。これらのルートにも弱冠の起伏ある展開はラストに用意されているものの、波乱と呼べるようなイベント展開ではありません。最後は、やはりヒロインと主人公の前向きな姿勢が描かれて終結するという感じです。

絵は、美麗と判断できるレベルです。
立ち絵のポーズは2〜3パターンぐらいですが、立ち絵の変化はさほどないような印象を持ちました。演出自体は上手いのですが、変化自体はあまりしてない気がします。あとは、翼美羽の立ち絵ポーズが不自然に見えます。
1枚絵のイベントCGは多く、場面展開中でも適度にイベントCGは挿入されるのが好印象です。ただ、春日野陽菜のイベントCGの一部が立ち絵と違って見えるのはNGだと思います。

システム面ですが、弱冠のストレスを感じます。画像エフェクトは切れますが、処理が遅いです。特に場面切り換わり時にストレスを感じました

ボイスは、主人公以外のフルボイス仕様です。ボイスはキャラに合っています。
BGMは当たり障りのない音。

プレイした印象は、普通の出来です。
ヒロインのキャラは良く出来た感じを受けますが、男性のサブキャラは完全に失敗している印象を受けました。こういった部分でドタバタ系になりきれない…という感じです。
ヒロインでも、真行寺真央のキャラは意外でしたが、やはり作品を盛り上げるカタチとしては正しい判断だと思います。
しかし、やはりギャグの部分が弱いのは男性キャラにあまり個性を感じなかったことです。まじかる部（ヒロイン3人）と科学部（男性サブ2人）を対決させるのは良いアイデアですが、そういった描写が皆無に等しいという部分で残念です。また、男性キャラは会話における役割が毎回同じなので、これはさすがにダメだと思いました。ギャグとも覚束ない台詞を吐くだけで面白味も何もありません。
そのため、日常会話の部分で決定的な面白さの伝わってこない作品です。しかし、飽きる…というところまで行かなかったということで最低限のレベルは維持しているとは思います。この作品のシナリオライターの面子から考えれば、もっと何かしら改善できた部分があるかと思いますが……ということで少し残念です。
シナリオは、最初から最後まで盛り上がりに欠ける内容でした。会話中心でシナリオが進み、余分な記述がなくテンポ良く進むシナリオ展開には好感が持てます。しかし、主人公の心理描写は中盤まで弱い感じです。中盤ぐらいからヒロインと結ばれるわけですが、主人公とヒロインが付き合うきっかけに至る経緯が全般的に弱いです。ただ、ラスト周辺では主人公の心理描写もされており、この部分でようやく主人公とヒロインが好き合っているという動機付けがされるという始末でした。
シナリオ設定は上手くされており、記憶に関する説明付けも妙に納得してしまう部分があり良いと思います。しかし、それがヒロイン2人に限定される…という部分で残念です。他の3人のルートにおいて序盤の設定が意味を成していないので、他の3人のルートがオマケに見えました。また、展開に起伏が無く平坦なシナリオ展開だったのも残念です。起承転結があるのかないのか微妙な感じですが、”転”の部分の描写が圧倒的に足りていないということで、平坦なシナリオ展開で面白味がないのだと思います。
ただ、まだ演出面が上手かったり、日常会話の部分においてもまだ飽きさせない作りだったことを考えれば、致命的に面白くない作品だとは思いません。

作品は純愛系のシナリオでスッキリ終わりたい人向け…という感じです。エンディングは鬱な部分が無く、前向きな方向を持ったハッピーエンドで終結しますし、三角関係になってもドロドロとした展開が無くサッパリしています。順調にヒロインと結ばれて終わるということから万人向け……という印象を持ちました。
ビジュアル面ですが、立ち絵の変化がもう少し欲しいぐらいで、CGに関しては全く不満はありませんでした。エロは後半で2〜3回で終了。