PP -ピアニッシモ- 操リ人形ノ輪舞 | |
Innocent Grey | 2006/09/29 |
総監督:杉菜水姫 | プロデューサー:杉本晃志朗 |
シナリオ:ますだ由希 | 原画・キャラクターデザイン:杉菜水姫 |
五・一五事件、二・二六事件といった日本帝国軍の混乱時期にあった時代を背景にし、 主人公の近辺で起こる奇怪な殺人事件を題材にした内容です。 ジャズバー『カデンツァ』でピアノ演奏をしている主人公・玖藤奏介。 そこには、主人公の身近な人物達も集う。 玖藤奏介はある夜、酔った帰宅中に見知らぬ女性に襲われてしまう その場を何とか収束させるものの、 翌日その女性が刺殺され、その嫌疑が主人公に向けられていると知る。 そして、主人公は表の世界から身を隠す生活に入るが… という展開です。 ジャズのBGMに乗りながら如何にもバーの雰囲気を醸し出す演出するところから始まるストーリー。 そして、異常なまでに狂った女性…更に殺人と… 緊張感ある演出にサスペンスを臭わせる展開という非常に期待を持たせるような始まり方です。 序盤を過ぎると、作風は緊張感を持たせたサスペンス風のシナリオというより、 人間関係に重点を置いたドラマ風の作りになっています。 バーのマスターであり、主人公の理解者・護堂弦一郎 幼馴染の警察官・菱谷琢磨 幼馴染の橘美華夏 妹の玖藤柚芭 バーで給仕をしている高梨千花 バーの歌い手・韮崎璃宝 探偵気取りの白河綾音 といった人物達との会話が中心になって話が進んでいきます。 関連していることは、殺人事件についてのことですが、 作品としては、殺人を猟奇的に演出するよりも、 主人公を庇うように事件を検証していくような状況の整理…というのが話のメインになっています。 憲兵や警察から身を隠すことになった主人公は、 ある組織の女性・相馬葵の接触を受け、そして組織下の庇護を受けます。 これが、後のストーリーに大きく関連する事象になっており、 またこれが全て…と言えるような展開でもあります。 中盤になり、再び主人公の周りに一波乱が起きます。 そして新しく築かれる人間関係から事件の真理に近づいていく…ということからエンディングに帰結していきます。 エンディングは、ヒロインの個別エンディングも用意されていますが、 扱いとしては、バッドエンドだったり、事件が未解決のまま逃亡するというノーマルエンド扱いのものが大半を占めます。 事件の解決するルートは1つだけであり、 それに付随して視点位置の変更されたトゥルーエンドがあります。 ただ、帰結の仕方が単純であり、ストーリーの明快さが目立ちすぎてストーリーに捻りがありません。 裏も表もなくそのままの筋道で完結してしまうのですが… 序盤の始まり方からして、こういったストーリーの結末に納得できるかどうかが、この作品の評価の分かれ目になりそうです。 作品としては、殺人やサスペンスに重点置いたモノというより、 人間関係の相関などのドラマっぽい部分を演出したもの、 そして、昭和11年という時期を舞台にしながらも、 非現実的なフィクション性を備えた架空の物語…として捉えるのが無難でしょう エロは(選択肢によって)前半から適度に発生していきます。 描写は普通の範疇ですが、時々淡白に感じたり、中途終了している印象も受けます。 主人公の目の前でヒロインが犯される場面もあります(1箇所だけ)が、 寝取られと思うかどうかは微妙かもしれません(ヒロインが堕ちない) |
絵は、美麗です。 死体の絵もありますが、グロイと感じるかどうかは人それぞれかもしれません。 個人的には、作風から緊張感が感じられないためか、グロイとは思えませんでした。 キャラクターの立ち絵は3パターンぐらいで、変化は普通です。 1枚絵はエロ絵が中心ですが、イベント絵が必要な箇所には1枚絵は置かれている印象はあります。 システム面はさほど気になることはありませんでした。 ボイスは、主人公を含むフルボイス仕様ですが、 視点位置が主人公の場合は、主人公のボイスはありません。 BGMは、ジャズを中心にして、作風には合っていると思います。 |
プレイした印象は、 普通の出来です。 序盤での演出は目に止まるものがありましたが、それが長続きしません。 序盤の流れと、本編の流れが異なっており、更には最終的な方向性も流れが違っていると感じました。 サスペンスを臭わせながらも実際はサスペンス風でもなく、 どちらかと言うと、ドラマっぽい印象を受けました。 ましてや、主人公本人が殺人をしたかどうかもわからない状況で、 殺人容疑のある主人公を庇い立てするように進むヒロイン達の会話は、ある意味滑稽に映ります。 シナリオは、本編ルートで、やや都合の良い展開が待ち受けています。 主人公は、自らの運命を切り開こうとはしないで、完全な他力本願の状態です。 その状況下でヒロイン達が庇い立てをして、状況が進展していく…という展開がメインになっています。 ただ、本編ルートで都合の良い展開の部分が、 後の視点位置が切り替わった真実を語るルートで、都合良く進展行く状況が何故起こるかの説明はされていますので、 作品をコンプすればモヤモヤした部分は解消するものの逆にネタの部分で失望するかもしれません。 また、シナリオはルートによって都合よく解釈される傾向があり、 設定的な部分が変化するために連続でプレイすると混乱をしてしまいます。 個人的にはこういった部分で、もう少し統一感が欲しいと思います。 シナリオのネタの部分に関しても、 序盤の単なる奇怪な殺人事件から壮大なストーリーに変貌してしまうのですけど、 作品をコンプすれば、それが極々個人的なじんまりしたネタに集約されるため、 そのギャップがアンバランスに感じました。 そもそも、シナリオが最終的に勧善懲悪っぽい雰囲気に包まれてしまい、 狂気に走る理由すら不明瞭のままに終わります(説明は一応されていますが、それで納得できるかどうか…でしょう) 作品としては、 作風に緊張感がなく、ひたすら淡々とテキストを読んでいく作業をしている感じになります。 テンポ良く読める簡潔さには好感が持てますが、ゲームに集中してプレイできるような面白さや魅力が伝わってきません。 プレイしていても、「面白くない」とも思いませんけど、 展開的に不要なパートが多く、シナリオの核となる部分で作品を見ていけば全体的にダラダラした展開のようにも思います。 更には、序盤の演出に拘っているためか、その後の「承」「転」「結」の部分が弱く感じます。 勿論、シナリオのネタ部分の面白さがないのも原因だと思いますが、 不要なパートを削いで展開にメリハリをつけて欲しいです。 そもそも主人公の性格からして心理的なものが弱く、 緊迫感、焦燥感など、シナリオを展開させる視点位置から見た人物の気持ちがハッキリと伝わってこないために、 淡々とテキストを読むだけの作業をしている感じです。 ゲームは、内容的な部分から見ると、不満の残る感じで終わりますが、 作品の雰囲気や、ドラマっぽい人間関係の描写を考慮すればさほど悪くはないかもしれません。 エロシーンも適度に発生しますし、あまり深く考えずに淡々とテキストを追ってプレイすればそこそこの内容になっていると思います。 |