ふたりでひとつの恋心
大熊猫 2006/1/27
シナリオ:丘野塔也/佐野心音 原画:天櫻みとの

子供時代に”ちー”という少女と結婚の約束を交わした主人公。7年後、許婚として目の前に現れたのは”ちー”に似た双子だった…という話。

シナリオは、序盤でこのゲームのキーポイントとなる主人公と”ちー”の子供時代の話が綴られます。このパートは後のシナリオの展開には必須とも言えるイベントで、7年後の主人公の周りで起こる出来事に起因する出来事の元になります。プレイ開始の最初は淡々と綴られていくだけ…という印象を受けますが、オープニングの最後にはゲームをプレイする人の…ある種の感情(主人公に対して感情移入させるような)を引き出すような展開に持って行くという手法を用いており、表現的には簡潔でありながらゲームに上手く惹きこまれます。
本編が始まると7年後の世界ですが、目の前に現れる2人の姉妹のキャラの作りが上手いです。かわいい妹分(ドジっ娘)の姉・野々宮千尋と、理知的で素直になれない性格のツンツンした妹・野々宮千早というキャラですが、これを上手く活用したシナリオ展開になっています。前半は、この2人とサブキャラの日常的なパートが続きます。ドタバタ系とは全然違いますが、キャラの性格付けが上手くできているため、会話における役割がハッキリとしています。会話のテンポも良いし、不要な表現が無いので好感が持てます。テキスト記述は基本的に会話中心となりますが、会話だけでもストーリーが判ってしまうような誘導の仕方になっています。
中盤あたりから双子の片割と付き合い始め、その頃から適度にエロシーンが発生します。
展開も、双子の片割と付き合っているのに、もう片方の片割も主人公に気を持つという三角関係という関係に持っていかれます。修羅場もあり、3人のドロドロした関係にまでは発展しませんが、かなり拗れた関係にはなります。
終盤は、序盤においた布石が使われます。展開としても予測不能な展開(というより突拍子もない…)になりますが、ある程度予測できていた事態の通りに、涙を誘うような感動があります。

メインとなるルート以外はオマケという出来で、全てはメインルートに集約されている…という印象です。エロも、中盤以降の発生ですが、数的には結構多くは感じます


絵は、塗りにややクセがありますが、まだ美麗と判断できるレベルです。立ち絵のポーズのバリエーションは4〜5パターンぐらいあり、あとは表情違いです。ゲーム進行においても立ち絵のい変化は結構変化するという印象を受けます。
1枚絵は、ゲームの性質からか…エロがメインになります。ゲーム中イベントにおける1枚絵の表示は、最低限のレベルで表示されているという感じでさほど多くないという印象を受けます。

システム面においてはさほど不満を感じませんでした。テキスト送りは快適です。不満点としては、場面切り替わり時に弱冠のストレスを感じることでしょうか……。人によってはあまり気にならないレベルかも。あとは、メッセージウィンドウの透過度が変更できません。見難い…とまでは行きませんが、立ち絵とメッセージが被る部分で少し気になる程度です。

ボイスは主人公以外のフルボイスという仕様です。しかし、全体的にマイク越しという感じを受けます。


プレイした印象は、良作一歩手前という感じでしょうか…
出来としては悪くはないのですが、ひじょうに惜しいところまでは行っています。
文章が簡潔で、理解しやすい内容ですし、会話がメインとなっているのにシナリオが進行しているのが判る…という作りにしているのは賞賛に値します。これは、何気ない表現でプレイヤーに理解できるように誘導しているライターの配慮だということが判ります。 ゲームシナリオの基盤となる序盤ですが、明確な起承転結の”起”を演出しています。これはこのシナリオの”結”に繋ぐ為に絶対的に必要となってくるということを考えれば、シナリオ構成として十分練られたものだと判断しています。また、キャラの性格付けを明確にしているのも好感が持てます。単にツンデレキャラと妹キャラを置いているのではなく、シナリオの進行においてキャラの性格が大きく影響を与えていました。特に中盤で主人公と千尋が付き合い始めるわけですが、その後の三角関係に発展するのも、千尋と千早の関係が拗れるのも、そういったキャラの性格を上手く利用したことによるものです。
また、鬱展開でもないのに十分感動できる展開を用意したのには賞賛できます。これも、序盤の”起”の部分を上手く描写したことによるものです。
惜しむところは後半の展開がやや強引だったことでしょうか。千尋と千早の関係が拗れてしまう原因がやや説得性に欠ける部分があります。一応、理由付けはされていますが、仲の良かった姉妹の関係が壊れる原因になる程でもない気がします。ただ、姉妹の仲が修復しそうで修復しないという二重、三重の展開に持っていったというのは面白いと思います。
あとは、エンディング。正直…このエンディングはちょっと……。希望としては感動したところでシナリオが終了して欲しかった……。その後の展開で気分が萎えてしまいます。
藤森蓮ルートと都川りこルートですが、この2つのルートは不要に思います。メインとなるエンディングに比べてかなりシナリオのクオリティが落ちます。そもそも、このゲームの起承転結は野々宮姉妹のために用意されたものなので、その時点で両ルートがオマケということが判ります。内容も薄いですし、起伏も平坦で無駄に長いという印象を持ちました。エロシーンも終盤なので、ややアピール性に欠ける内容であることは間違いありません。



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以下、日記からのログです。ネタバレの可能性あり

2006/02/13
”ふたりでひとつの恋心”も始めました。正直、”めいどさん☆すぴりっつ!”ばかりやるのもツライ。”めいどさん☆すぴりっつ!”は完全に飽きてしまってるので、コンプするのにも時間が掛かりそう。
”ふたりでひとつの恋心”は現在のところまぁまぁ良い感じ。多分、良作にはならないと思うけど、展開次第によっては良くなるかも。オープニングをプレイしてたときは、弱冠危機感を感じたけど、オープニングの終わりで、「あぁ…なるほどね」と思わせる展開だった。というより、オープニングの終わり方はかなり良好だった。十分、作品の世界に惹きつけられる気がするし、それがためにテキストも読もうという意欲が湧きます。
”ふたりでひとつの恋心”は余分な記述がなく、会話中心で進む。しかし、その会話だけでもストーリーが判ってしまうような誘導の仕方になっています。こういった部分は正直に上手いと思いました。
ただ、オープニングを過ぎると…不毛な会話を読んでいるだけ……にも感じますがね……

2006/02/17 ふたりでひとつの恋心
”ふたりでひとつの恋心”進行中。
序盤の出だしが良いとは以前に書いたけど、それ以降は普通の出来という雰囲気だった。日常会話メインで、まぁどちらかと言うと不毛な会話。しかし、まだ会話の内容は楽しめるものがあったから別段悪い印象はない。
このゲームはキャラの作りが上手いと思う。
姉の野々宮千尋は、かわいい妹分(ドジっ娘)という感じ。妹の野々宮千早は、理知的で素直になれないというツンツンした感じ。そういったキャラ設定が上手く活きているというシナリオに思います。
ゲームはほぼ会話のみ(90%ぐらいは会話だと思う)の進行で、これも以前書いたけど、会話だけでもシナリオの進行が判るような仕様になっているのはやはり上手いと思います。これのおかげで余分な記述が見当たらない。テンポも良いし不要な記述もないので好感が持てます。
しかし、内容は普通……
ただ、序盤の出来事がいくら経っても描写されないと思ったら……後半にシナリオが動きました。

主人公は千尋と付き合い始めるけど、色々とあって…千早も主人公に気を持つようになる。(またこの辺の…千早が、如実に主人公を好きになっていると判るのは、やはり何気ない表現が上手いと思います)
つまりは、双子が主人公を好きになってしまうんだけど、付き合っているのは姉の方。妹は素直になれないツンツンした性格のため、行動は裏返しになってしまう。
まぁ、このままラストに向かうにしても、展開は読めてきますね。まだクリアしてないけど(汗
私が思っている方向に向かうなら良い作品になると思う。
つまり序盤に置いた布石は、多分ラストに使われると思う。やはりこの辺の序盤に置いた伏線の使い方が、この作品の評価すべきところになると思います。
しかし……これでは双子以外のエンディングはオマケだな……予想だけど。

2006/02/18
実は”ふたりでひとつの恋心”も終了。レビュー書いてないけどね…現在気分が優れないので後日ということで。寒気がするので完全にヤバイ状況です…
”ふたりでひとつの恋心”は惜しい出来でした。これは素直に面白いです。
昨日の日記に書いたことは70%ぐらいは予想通りでした。
ただ、予測外だったのは○つ子だったことでしょうか……
私は、2人の内の片方(千早)が子供時代に結婚を誓った仲で、千早は性格上素直になれないという部分でラストに向かって真実を語るのかと思っていましたが……まさか…○つ子とはね。こんなの絶対予測できないよ(笑
だから、千早と千尋のドロドロの関係が描写されて面白くなるかなぁ〜〜なんて思ったんだけど。

でも、○つ子だったとしても、千早と千尋はドロドロの関係になってしまって(苦笑
また、序盤に引いた布石は予想通り使われました。予想通りだったけど…やはり泣いてしまった
鬱でもないのにこういった感動できるものを提供してくれたことには賞賛できますね。
しかし…そこで終われば良かったんだけどなぁ……無意味にエロシーンが続くので感動したのに気分的に萎えてしまった。

あとは…”双子以外のエンディングはオマケ”…という昨日の日記に書いたことは正解でした。ルートによってこんなにシナリオのクオリティが違うとは……

2006/02/19
”ふたりでひとつの恋心”のレビューupしました。結構ベタ褒めですけど点数は7。要因はメインルートのエンディングがイマイチだったのと、メインルート以外のルートが駄作に近かったためです。メインルートは途中で終わってくれていれば心象は良かったんですがねぇ……
最後のはちょっと行き過ぎてるというか…いくらなんでもハーレムエンドには期待していない。

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