鎖 -クサリ-
Leaf/AQUAPLUS 2005/9/22
シナリオ:枕流 原画:ぴめこ/トメ太

船上という閉鎖的な空間で起こる凌辱劇…それを食い止めようとする主人公…という話。

シナリオは、プレイヤーに緊張感を与えるような趣向が幾つか凝らされています。プレイ開始時はマッタリとした雰囲気で進行しますが、凌辱が開始された辺りからは強くて絶対的な存在である犯人という概念を上手くプレイヤーに植えつけるように表現されているという印象です。犯人が最初から判っているせいか「13日の金曜日」のような主人公達を追い詰める…という恐怖感を上手く表現しています。シナリオの前半は「13日の金曜日」のホラー的な部分を凌辱…という部分に置き換えたという感じでしょうか……。
それに加えて、キャラクターの設定がひじょうに上手く出来ているという印象を受けます。人間の心の奥底に潜む汚い部分を如実に描いているという印象です。端的に言えば自分の身を守るために他人を犠牲にする所とか……サブキャラは自己中心的な考えを持っていますけど、ある意味、物凄く現実的に映ります。そういった醜い部分を表現することによって、ゲームをプレイしているプレイヤーの反感感情を上手く引き出しています。よって、プレイする人によっては、鬱っぽく感じたり、ウザイと思うかもしれません。
最終的には犯人は判っているが、内通者が誰か……というのがメインで進めていく話の内容です。エンディングも丁寧に描写されています。ハッピーエンド(?)にしろバッドにしろ十分満足のいく出来です。シナリオのルートは幾つかありますが、それぞれキャラクターの置かれる状況設定には変化がありません。よって、どのエンディングに向かうしろシナリオに一貫性が保たれているのが好印象です。


絵は……絵自体の塗りは良い感じです。絵の構図もさほど悪くは見えません。しかし、立ち絵の部分でキャラの顔の全体的なバランスが崩れているように見えます(1枚絵では問題ありません)。あとは、イベントCGの挿入箇所をもう少し多くして欲しいと思います。凌辱シーンは勿論CGはありますが、作風的に犯人が主人公たちを追い詰める行為…というのがメインなので、そういった部分で背景CGとテキスト処理されているだけでは臨場感が足りません。特に逃げ惑う場面ではスピード感を出せるように工夫できたら…と思います。

システム面は、画像エフェクトが切れないのが難点です。そのため、クリック時のレスポンスが悪く感じました。

BGMは作風に合っているという印象です。ボイスは主人公を含むフルボイスでキャラとの違和感は受けません。


プレイした印象は、文句なしに良作です。
適度に緊張感を保てたシナリオでしたし、キャラのシナリオにおける役割もしっかりと作り込まれているので良い感じです。特にシナリオに一貫性があるという設定でありながら、ルートが違っても十分緊張感あるシナリオを展開させているという点で、結構作り込まれているシナリオ…という印象を持ちました。また、全てのルートをクリアすることによってようやく、細々とした謎が全て明らかになって行く…という作りも上手いですね。
システム面の使い難さを感じたのは最初だけで個人的にはシナリオに集中できた分、最終的にはさほど苦に感じませんでした。惜しむところは、ビジュアル面での描写不良。エロを前面に出すより、もう少しイベントCGを増やして欲しいです。


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