Tick! Tack!
Navel
2005/9/16
シナリオ:あごバリア
原画:鈴平ひろ/西又葵

Navel作品「Shuffle」のアナザーストーリー。
過去の魔界に迷い込んだネリネ達。そこで、ネリネの父親には実際の母親とは違う婚約者がいた。そして…という話。

ゲームシナリオとしてはいわゆるタイムスリップもので、ネリネの母親と父親をくっつけるために努力する…という展開ですが……序盤ではそういった旨が伝わってきますが、中盤以降でゲームの設定とは裏腹に弱冠逸れ気味になります。雰囲気としてはドタバタ系っぽいですが、ギャグ系の面白さというのは皆無の状態で、単に賑やかな雰囲気を楽しむというもの。どちらかというと不毛な日常会話が中心で、シナリオの根底となる設定がそのままゲームの進行で展開されることはほとんどありません。つまりは、かなりどうでもいい会話ばかりで、話の本題がどこにあるのか判りにくい内容です。
ラスト付近になると、かなり意味不明です。話の本題とエンディングがほとんど結びついていません。突然エンディングが訪れる…という感じで、エンディング前まで話の内容と、エンディングが全く別モノの内容に映ります。


絵は、この原画家のクセか…弱冠下半身を大きく描き過ぎる傾向がありますが、今回もその通りでやや不自然です。
あと、立ち絵と背景のバランスが悪く、遠近感がありません。他は……キャラの区別があまり付かないですね…。立ち絵は2パターンのポーズに表情違い。
1枚絵は差分ばかりで同じ構図の絵ばかりを見させられている気がしました。

システム面ではさほど気になることはなかったです。ただ、パッチを当てても誤字が目立ちます。

BGMは作風に合っているといえば合っている気がします。当たり障りのない音。


プレイした印象は地雷です。
ファンディスク的な意味合いのゲームですのでしょうがないのかもしれませんが、取り合えずファンディスク云々より決定的に面白くありません。日常会話がメインの内容で、一応シナリオ設定的にはシナリオはありますが、そのシナリオが丁寧に描写されているとは思いません。エンディングを見たときにかなり呆れてしまいましたが、エンディングがそれまでに至る過程の内容を全く受け継がれていないので、なぜそのようなエンディングになるのかが理解できません。つまりはシナリオの接合性があるとは思えない出来でした。
日常会話もドタバタ系…とは違います。BGMにかなり誤魔化されていて、BGMを切ると普通の会話でした。そのために面白味のない不毛な会話…という印象しかもてません。
他には、「Shuffle」を既に熟知しているものとしてゲームが始まるので戸惑います。既に「Shuffle」はプレイしていても熱烈に好きではないので、固有名詞(名前)を連発されてもわかるはずもなく……。ファンディスクとはいえ、初めてプレイする人のことも考えてゲームを製作して欲しいと思います。

シナリオの設定ですが、過去の事象が現代の事象と食い違っている(?)ために、過去の事象に干渉する…というのはタイムスリップモノのシナリオでは致命的なミスだと思います。
通常は、

  • 現在の事象を修正したいために過去の事象に干渉するパターン
    というのが一般的であり、それが一番説明が付きやすい。
    あるいは、
  • 未来を予知し、その未来に向かって行動するパターン
    (というのもOK。)だと思いますが、
    現在という事象がある限り、過去がどうであろうとその現在の事象になる…というのがタイムスリップモノの掟だし、それが一番説明が付き易い。
    しかし、「Tick!Tack!」は、主人公が過去に行けば過去の事象が中心になり未来が変わるという……それでは時間の主軸が常に主人公を中心に回っているという変な設定になっています。
    そのため、ファンディスクということで割り切った低レベルなAVG…という印象です。


  • 戻る