もしも明日が晴れならば
ぱれっと 2006/2/24
シナリオ:NYAON 原画:くすくす

野々崎明穂は主人公と付き合い始めるが、肺炎で死んでしまう。そして、主人公の目の前に現れたのは幽霊になった明穂だった…という内容。

6章(+α)仕立てのAVGで、各章においてはそれぞれテーマが設けてあり、そのテーマが完結することで章区切りにしている……という仕様です。
Chapter1では、幽霊になった野々崎明穂を各登場人物が受け入れるまでの過程が描かれており、その事柄を起点として物語が始まります。各章には、それぞれの章内において起承転結があり、そして章の最後には感動を誘うようなドラマ性もあります。各章の”結”に持って行く過程は、順序立てたシナリオ展開があり、各登場人物の心理描写は適度に丁寧にされています。立ち絵の演出が上手く、そういったビジュアル面での登場人物の心理状態を表していく…という手法が功を奏しているという印象を受けます
話の内容は会話中心で進んで行きますが、何気なしにゲームプレイヤーに状況がわかるような描写の配慮があります。そのため、作品の内容としては判り易く、作品の世界観にも入り易い印象を受けます。日常会話は、余計な記述が弱冠あり、少しシナリオ進行のテンポが悪く感じるものの、会話内容においてはキャラの個性がよく出ていて雰囲気的には悪くはない…という印象を受けます。文章構成からは冗長されている感は受けなく、素直に作品に溶け込める…という感じです。
ゲーム中のイベントがハッキリとしており、またそれに伴ったイベントの前後関係もしっかりと設定されています。そのため各章毎に見れば、レベル的にハイレベルな仕上がりだと感じます。
エンディングは、各ルート毎に色が違っており、そういった意味では各ルートをプレイした後の達成感と満足感が強く残る…という印象を持ちました。


絵は、全体的に美麗です。1枚絵、立ち絵、伴に差を感じさせない作りにしているのはさすがだと思います。背景も綺麗に仕上がっていますし、背景パターンもそこそこ多いという印象は残ります。
立ち絵の演出は、このブランド独特の良さが出ており、このブランドの前作”マリアディアナ”程の極端な立ち絵演出は影を潜めていますが、キャラの台詞と立ち絵の変化(キャラの表情)が上手くマッチしています。そして、これらが各登場人物の心理描写を推測させる材料にもなっている…という部分はひじょうに上手い演出です。
立ち絵のバリエーションは多く、パターン的にも3〜5パターン(以上?)の表情違いになります。そういった部分で、立ち絵+テキスト処理が続いても飽きさせないというクオリティを保っています。
ただ、作品全体を通しても、1枚絵のイベント絵の挿入箇所が少ないように思います。挿入できる箇所は多いのですが、立ち絵+テキスト処理が主力になっているという点が残念です。

システム面は、エフェクトを切ってもクリック時のレスポンスが悪い…というのがネックです。このレスポンスの悪さは、テキストを快適に読む…というのを明らかに阻害しています。

ボイスは主人公以外のフルボイスという仕様です。ボイスはキャラに合っているという印象です。
BGMも作風に合っていて良い感じです。


プレイした印象は、ほぼ良作…ってところでしょうか。
確かに各章毎に見れば、レベルの高い作りにはなっています。しかし、作品全体を通して見た時には、シナリオの核となる部分の描写が少なく、逆に章仕立てにしたことが明らかに仇になっています。そのため、個別ルートでエンディングを迎えたとしても、最初からプレイした流れから言うと、余計なイベントが多く、無駄が多い…という感が強く残ってしまいます。
また、個別ルートを全体の位置づけで見た場合、起承転結の流れがあるのは野々崎明穂と千早のルートであり、野々崎つばさと湊川珠美のルートにおいては”転”と”結”だけが明確になっているだけです。そもそも、ゲーム設定としては、野々崎明穂のために用意された”起”であるため、そういった部分でムリが祟っているかと思います。
共通パートが長く、Chapter5のラスト周辺までが共通パートです。そのため、複数回プレイは段々苦痛になってきます。そもそも、個別ルートとは無縁のムダな章があるため、そういったところで全体的なシナリオをムダに長くさせ冗長している感があります。もっとシナリオの贅肉を削ぎ落としてシナリオの根本となる主題で勝負して欲しかったと思います。
しかし、このブランドの特徴である立ち絵の演出がかなり活きており、そういった部分で飽きさせない作りに持ってきたことは賞賛に値します。また、個別エンド、あるいは各章のラスト伴にドラマ性のある感動ある仕上がりにしていることや、理解しやすい内容で作品に素直に溶け込める…という部分も良い点です。
惜しむところは、全体的なバランスがとれていなかったことでしょうか。



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以下、日記からのログです。ネタバレの可能性あり

2006/03/01 もしも明日が晴れならば
”もしも明日が晴れならば”始めました
……微妙ですね…
まだ序盤なので大したことも言えませんが、
シナリオは理解しやすい。これは、理解し易いように持って行くというライターの配慮を感じます。場面展開も急な部分がありませんし、目的がハッキリとしているので戸惑うこともありません
ビジュアル面は問題なしです。ぱれっと作品なので、如何にもぱれっとという感じの演出です。ただ、”マリアディアナ”程の極端な演出は避けているようです。”復讐の女神”辺りの演出の度合いでしょうか……。立ち絵のポーズも5パターン以上ありそうですし。
しかし、肝心のシナリオは普通のような気がします。まぁ、ラストに向かってどうなるかわかりませんが…
ただ、状況的に予定調和になりそうな気がします。
まだまだ序盤ですが、登場キャラとか考慮すると自ずとラストがどういった展開になるのか予測できます。
現時点では、弱冠ダルく感じます。会話が不毛…とまでは言いませんけど、読んでいてもあまり面白味がないです。
序盤でも、なんか”愛cute〜”と同じパターンだと思いますがね……
プレイしていても新鮮味がない…というのはやはり”愛cute〜”と被ってるから……

2006/03/05 もしも明日が晴れならば
1ルートクリア…
ようやくです。そしてネタバレレビュー投下

〜〜つばさルート総括〜
起承転結は野々崎明穂のためにあるのであるため明確な起承転結がない。しかしシナリオの展開において、転結の部分はあるし、後半の描写が丁寧で心理描写も上手くできている。
惜しむところは主人公のつばさに対する想いのきっかけとなる理由が薄い…ということぐらい(主人公の野々崎明穂に対する想いがそれまでの過程で丁寧に描写されてしまっていたため)で、あとの描写は何気に感動を誘うものだったし、大して批難するべき要素もない。
つばさと付き合うにしろ手順が踏まれた構成になっているし、”転”の部分のつばさが主人公と向き合えない理由も明白である(逆に主人公が野々崎明穂に対する想い…というものを利用したものだった。あとは、つばさが明穂に対してどういった感情を最初から抱いていたか……というのもキーポイントになっている)。
そういった意味で上手いシナリオだと思うし、満足も出来る。あまり細かいところを気にせず、ゲームをプレイする人が広く受け入れる姿勢さえあれば良作と言っても良いと思た。
予定調和だが、純愛系において面白いと思える要素を上手く散りばめたシナリオだと思う。
惜しむところは、最初からプレイした場合に最初のゲームプレイのシナリオの流れとラスト近くのシナリオの流れが違っており、そういった部分で一貫性に欠ける内容に思う(元々、野々崎明穂のために用意されたシナリオ展開であることが明白なため)。ヒロインのルートに乗れば秀逸だが、最終的な流れの見地から見ると、それまでの過程がやや長々しいものだし、最終的に決定したヒロインのシナリオの核となる要素にならない部分が多い。これは共通パートによるものになるのだが、いっその事共通パートは最小限に止めて欲しいところである。しかし……1プレイしただけでどこまでが共通パートか判ってしまう仕様って一体……。
エロ絵は…構図の取り方が上手いと思う。エロくはないけどね
個人的には1枚絵の挿入できる箇所が多いのに、立ち絵+テキスト処理に拘っている部分がね……。確かに立ち絵の演出は上手いが、1枚絵のイベント絵はもう少し入れるべきだと思う

いや〜〜何にしろ満足できました。確かによくよく考えれば「終わりよければ全て良し」とうような構成だよ。しかし、あんましそういったことを考えずに作品を受け入れれば素直に面白い内容だと思います。まぁ、ラスト付近の描写がやたらと丁寧だった…ということも起因してると思うが。
まぁ、このライターってそういう傾向があるのかもしれないな。”Dear My Friend”のシナリオ構成もそうだったし。
ただ、全体的な流れが何となしに”処女はお姉さまに恋してる”に似ていると思うのは私だけでしょうか……(不要な共通パートが長い部分でww)

現状の私の評価は8点ってところでしょうか……。バランスが良ければ9点ぐらい付けてもいいんだけど、バランス悪いからなぁ……

2006/03/08 もしも明日が晴れならば
もう一度最初からプレイし直したので、進行はかなり遅いです。日曜日には終わるという目算はあったんだけど、日本橋でかなりの時間を過ごしてしまったし、その後も疲れからかエロゲをプレイするのも少し躊躇してました。 ”AR”の進行状況は変わらず。多分、”もしも明日が晴れならば”が終わっても”すぺ〜すとらぶる”に行くと思います。”AR”は、面白いかどうかはわかりませんが現状は普通ということで。

湊川珠美ルートは終えました。以下に総括を

〜〜湊川珠美ルート総括〜
共通パートがchapter5の途中まである。やはり起承転結は、野々崎明穂のためにあるという気がします。湊川珠美ルートの起承転結は、chapter5から始まると考えればさほど問題はないが、それだと、それまでの話が余分であるということが残念です。
湊川珠美ルートでは明確な”転””結”があり、主人公と湊川珠美の心理描写も適度にていねいにされています。 湊川珠美が主人公を好きになる気持ちは野々崎つばさというキャラクターを利用して上手く表現されてました。こういったキャラクターの使い方は素直に上手いと思います。
しかし、主人公が湊川珠美を好きになる理由が曖昧にされてしまったことは残念です。途中まで、野々崎明穂を気遣った展開であり、これがChapter1からの描写において一貫した展開であると感心したのですが、その直後には湊川珠美と恋人になろうと主人公から言う始末です。
気になった点はその部分だけであり、最終的には野々崎明穂というキャラを最後まで利用した展開に持ち込んだことは上手いと思います。こういった部分で、これまでのChapter1からの流れが活きていると感じます。
しかし……10/26の湊川珠美の意味深な発言は何を意味したんでしょうか??

評価は以前と変わらず8点辺りですが、別段9点でも良いかな…とは思います。問題はChapterの仕様をどう考えるかで、Chapter毎にテーマがあり、そのテーマがそのChapterで完結しているのはいいのですが、シナリオを最初から最後まで通して見ると、やはり不要な部分が大量にある…という感じを受けます。本来は、分岐点を最初に持ってきて、その後は矛盾なく個別シナリオを展開させる…というのが理想ですが、湊川珠美ルートにおいては千早は不要です。しかし、野々崎姉妹の描写は絶対的に必要です。そういう意味では、Chapterの仕様にしているのも、ある程度は正解なのかもしれません。

2006/03/10 もしも明日が晴れならば
「もしも明日が晴れならば」

〜〜千早ルート総括〜
このルートも明確な”転”と”結”があます。またエンディング内容からすれば、野々崎明穂のためと思われる”起”も千早ルートの”起”にもなるし、Chapter2は”承”になるでしょう。ただ、純粋に千早ルートを最初から最後まで見ると、やはり無駄な部分が多過ぎます
このルートの不満点は、これまでのルートと同じ傾向で、主人公がヒロインを好きになる動機が曖昧にされているという点です。千早ルートでは、主人公が千早を”好き”か”嫌い”かで二者択一の選択肢を自分に言い聞かせるのですが、そこで”好き”…という結論を導き出してから、千早を好き…と言い始めます。
「好き」か「嫌い」かで、どちらかと言うと「好き」。だったら「愛している」…という論法は疑問に思う部分ではありますが、その後の主人公が千早を愛する気持ちを十分に表現したことは良いかと思います。
一方で、千早が主人公を好きになる動機は、このルートのシナリオ展開の核となる部分を担っていますし、オープニングで野々崎明穂に嫉妬する理由も説得性のある理由付けがされていたのが好印象です
また、他ルートにも絡む千早の犯した主人公に対する贖罪ですが、野々崎明穂を殺しただけではなかった…という部分が描写されたことでようやく作品全体におけるシナリオの説得性が増したかのようにも思います。作品タイトルも千早ルートに関係するものなので、千早ルートがこの作品の本ルートになるんでしょうか??

気になる点、あと1つ。
千早が疫病神になる経緯。
病気の千早は、病気の伝染源として村の人に殺されてしまいます。イツキを殺してしまった千早の贖罪が千早を霊体にするのですが、その霊体を見て村人は千早を疫病神と言うようになります。この時点では「疫病神」と呼ばれることに対する思い込みだったハズですが、”たま”の登場で「神に成りきれない疫病神」という存在…と説明されてしまいます。そして、その後は「疫病神」だから病気のことは熟知している…という発言もあります。思い込みから疫病神になってしまうのですけど…もう少し、説得性ある説明があれば…と思うんですが

2006/03/11 もしも明日が晴れならば
野々崎明穂のルートが終了した

野々崎明穂のルートが一番期待外れでした
主人公と野々崎明穂が好き合う…という説得性はゲームオープニングから一貫していることなので、そういった接合性は一番取れているとは思う。しかし、それでも章構成にしているので、余分なパートが多いのはこれまで書いてきた通りの状態です。
しかし…しかしなぁぁ……あのエンディングはちょっと…予定調和過ぎるというか…まぁ、その他のルートも予定調和なんだけど、野々崎明穂のルートのエンディングは、ループ系じゃぁない輪廻転生モノに典型的なエンディングなのがダメかと。
確か、ソックリなエンディングのゲームがあるはずなんだけど…思い出せない…(汗
輪廻転生モノと言っても、記憶にあるのはほとんどループ系のゲームばかりなので、多分思い出せないと思う。

湊川珠美が輪廻転生を仄めかす発言をしたので、途中から最終的にこういった展開に持ってくることは明らかだったけどね。期待していたエンディングとは、かなり違っていたので残念だった。これじゃぁ…普通過ぎる…
私の当初の予想では、霊体から実体化して生き返るのかと思っていたんだけど。
だって、千早という存在が折角あるのだし、そういった現実離れした展開に持っていく方が逆に自然だと思う。
輪廻転生は…自然じゃぁないけど、これまでにエロゲで何度か見ているエンディングの形態なので、今更…という感じを強く受けてしまう

ということで、野々崎明穂のルートを最後にプレイするのは完全に失敗です。このゲームの本命のルートは、物語の発端となる過去を描写する千早ルートのようです。

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