ユメミルクスリ | |
ruf | 2005/12/22 |
企画:田中ロミオ | ディレクター・シナリオ監修・演出:りりあん嬢 |
シナリオ:ユメミルクスリ製作委員会 | キャラクターデザイン・原画:はいむらきよたか |
平凡な生活を送っている毎日に変化を求めたい…という趣旨のAVG。 3つのことなるシナリオを織り交ぜたような作品で、 それぞれ共通のシナリオの核となる部分がなく、 共通していることは、極々普通のありきたりな毎日からの脱却…… ということです。 序盤からそういった趣旨の内容が綴られており、 決められたレールを行くだけの普通の生活… …が強調されて描写されていきます。 序盤は、日常的なパートが続きます。 登場人物の設定が上手く、 義理の妹の加々見綾や、義理の家族、 バイト先の先輩である椿弘文等、 そういったクセのある人物達とのコミカルな会話が続きます。 雰囲気的には淡々と進む…という傾向があります。 明るい雰囲気、楽しい雰囲気…というのは伝わってきませんが、 笑えなくとも、オチのハッキリした寒いギャグのセンスなどは、ある意味爽快です。 主人公はサッパリした性格で、自ら窮地に入り込むこともしない普通の人間。 そんな中、 クラスで虐められている白木あえか、 生徒会長の桐宮弥津紀、 ハイテンションのねこ子、 と、表面に出さないまでも心の内に傷を負っているヒロインと出会っていきます。 そういったヒロイン達との関係に深入りするかどうか…… という流れです。 シナリオの主軸としては、ヒロイン達の内面の問題解決… が描かれており、 当初は、主人公はヒロインとの距離を遠く置きながらも、 段々とヒロインとの心と心の繋がり…を強く強調したような展開へ進行していきます。 共通パートは60%ぐらいであり、あとはヒロインルートへ分岐します。 ヒロインルートに乗れば、それぞれとのルートとの相関関係はなく、 全く別の物語として楽しめます。 エロは、ヒロインルートの確定した中盤以降から適度に発生します。 ルートによってシーン数は違っています。 描写は淡白にはならず、長すぎず…というように普通のレベル。 キャラの絵柄が全体的に華奢なために、絵の構図としてはあまり栄えない…という印象があります。 |
絵のタッチは、好みの分かれる絵だと思います。 キャラが全体的に華奢であり、全体的に空間が多く出来てしまう構図になります。 塗りはクセのある感じはしますが、美麗だと判断できるレベルです。 背景も特徴的ですが、この辺は雰囲気に合っているかどうか…の問題でしょう。個人的にはさほど不満に感じません。 1枚絵のイベントCGは必要な箇所に配置されている…という印象があります。 この辺の演出は上手いと感じます。 立ち絵は、3パターンの表情違いです。変化は普通…というレベル。 システム面は、メッセージエヒンドウの透過度が変更できない、 あるいはフォント色が変更できない… の原因から、文字が読み難いです。 フォント色がウィンドウ色に同化しています。 また、エフェクトを切る設定があるものの、場面の移り変わり時に弱冠のストレスを感じます。 あとは……選択肢のときにカーソル移動するのが邪魔です。 ボイスは、主人公以外のフルボイス仕様です。 BGMは当たり障りのない音。 |
プレイした印象は、 面白い…と感じるルートもあれば、 全く面白くない…というルートもある…という感じです。 ルートによって、シナリオのネタとなるクオリティが違うという印象です。 描写的にも弱冠クオリティが違うような気もするのですが、 シナリオライターが何人関与しているのかわからないので気のせいかもしれません。 作品の雰囲気的には、 極々普通の生活に疑問を感じながらも、普通の生活から脱却できる機会もなく、 更には、脱却できる機会があってもそれに踏み出そうとしない… というものが上手く描写されています。 ある意味、誰もがそう思いながらも、 それを踏み出す一歩に中々決心がつかない…という極々普通のことを上手く描写していると思います。 そういうことで、最初はヒロインと距離を置きながら接触しながらも、 段々とヒロインの世界に踏み出してく主人公の気持ちや行動の変遷が、 丁寧に描かれている作品でした。 しかし、虐めを題材にした判り易い内容の白木あえかのルートだけが秀逸であり、 生と死を題材にした桐宮弥津紀は、大した面白さが伝わってきません。 主人公と同じように変化を求めたねこ子のルートは、 まぁまぁ良いかな…というレベルですが、最後だけの部分でしかありません。 傾向として、シナリオのネタだけで作品に惹きつける…という部分があり、 理不尽な虐めを受けている白木あえかのルートは、 非常に判り易いネタ、更にはイベントと相俟って、 最後までプレイヤーを惹き付ける魅力があります。 しかし、全体的に淡々としている描写のため、 その他のルートでは、ネタ的に大したことがないと、 さほど魅力の感じない内容になってしまっています。 ねこ子のルートは典型的で、 話の根底となるネタが理解できるようになるラスト付近では面白さが出てくるのですが、 それまでの過程が弱冠ダラダラしている雰囲気があります。 個人的には、日常パートがそこそこは楽しめましたし、 白木あえかのルートをプレイするだけでも作品価値としてはあると思います。 |