いな☆こい!〜お稲荷さまとモテモテのたたり〜
Whirlpool 2006/09/29
シナリオ:雨根初居/ゆげちまる 原画:てんまそ
SD原画:ペテン師

学園系ドタバタコメディAVG。

主人公・卓也の前に突如として現れた狐神(お稲荷様)である神代睦月。
主人公に恋し、神界から遥々やってきた睦月は、主人公宅に居候することになった。
しかし…主人公には何者かによって「女難の相」の祟りが掛けられ、
周りの女の子が突如として発情してしまう呪いが発現してしまう…
という流れです。

軽いノリの雰囲気で進行するドタバタ系の内容です。
構成は、7章仕立てであり、選択肢で分岐していく仕組みです。

主人公は学園に通っており、そこで、
幼馴染の巫女・三堂千尋、
先輩である九条緋伊奈、
といったヒロインとの会話や日常的なことが中心に描かれていきます。
そこに、神界から来た狐神・神代睦月と狗神・春日更紗が加わり、三堂千尋の嫉妬も煽りながらドタバタコメディに発展していきます。
作風的には明るく楽しい雰囲気で進行していきます。
主には三堂千尋の勘違いや嫉妬で、主人公が被害を被るワンパターン的な展開が多くなりますが、
時々何気ないボケがあったりと、スパイス程度に面白さは伝わってきます。

設定的にエロ重視に陥りそうですが、主人公はエロいながらも意思は固く、
エロゲにありがちな済し崩し的にエロシーンが発生する展開ではありません。
エッチなシチュエーションがありながらも、意外にも純愛に拘っている部分が伺えます。
そのため、Hシーンは適度に発生しますが、本番は中盤からになります。
更に各章にHシーンが1回というのも傾向の内の1つでしょうか……

伏線として、神界の描写、そして神界の住人達の描写もされていきます。
それぞれの思惑もハッキリと描写されています。
そのために伏線として機能していないようにも思いますが最終的なシナリオの方向性には思惑通りに進まない展開が待っています。
色々な立場の登場人物がそれぞれの思惑を持ち、更にはそれに巻き込まれてしまった主人公達一行の運命が描かれていきエンディングへ終結します。
最終的には一見、やや突飛で取り止めもないようにも見えますが、意外にシナリオは機能しており、
それぞれの立場を理解していればシナリオの接合性が保たれているのがわかるでしょう。

また、強い意志を持った主人公の性格がシナリオの展開に反映されているのも特徴的に見えます。
シナリオはヒロインとの関係も上手く描写されており、
ヒロインと主人公がお互いに好き合っている雰囲気は読み取れます。

エロは上記の通り、思ったよりも少なくは感じますが、
作品全体としては適度に発生しています。
描写はそこそこ丁寧ですし、絵が気に入ればさほど問題はないでしょう。

絵は、美麗です。
1枚絵は、やや少ない印象を受けますが、イベント絵とエロ絵の比率で見ると、
半々ぐらいでしょうか……
立ち絵は3アングルで若干のポーズ違いの表情違いです。
時々、表情がテキストと一致していないようにも思いますが、さほど気にならないレベルでしょう。

システム面では、場面の切り替わりが遅いのでストレスがあります。
それ以外では気になりませんが、場面の切り替わりが遅い部分だけが非常に気になります。

ボイスは、ヒロインと一部のサブキャラにボイスあり…の仕様です。
BGMは軽快な感じで作風に合っていると思います。

プレイした印象は、
内容的には良作だと思います。
しかし、作品全体としては、良作一歩手前という惜しい出来だと思います。

作風でドタバタした部分を前面に押し出した内容で、展開的にもメリハリを持たせています。
イベントで笑えるかどうかは人それぞれでしょうが、
少なくとも私は強引なドタバタした雰囲気が演出されているとわかりながらも、
カウンターのように入ってくるボケはそこそこ面白いと思います。

シナリオは、主人公に祟りが掛けられ、それを解決していこうとするものです。
そういったシナリオの方向性を持ちながら伏線が描かれていき、
最終的に登場人物の思惑によってシナリオの方向性は捻じ曲げられていきます。
このシナリオの変化は突如として起こるものではなく、伏線と幾つかの説明によって明らかにされていきます。

ラストの部分ではやや強引なまとめ方ですが、シナリオの説得性は保たれていますし、
何よりも作風的に軽いノリを強調しているために、それを吹っ切るような面白さが出ていて好印象です。
また、恋愛的な部分も十分に描かれていますし、
エンディングを迎えたときの満足感も残る内容でした。

不満点としては、
ルートが違ってもシナリオの方向性と展開が同じことでしょうか…
攻略キャラだけが違っているという感じであり、連続プレイでかなり苦痛を感じました。


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以下、日記からのログです。ネタバレの可能性あり

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