なみだ橋をわたって | |
ザウス【純米】 | 2006/07/14 |
企画・シナリオ:藤原将 | 原画:うえひろ/みかみたかし/あらきまき |
異形・アヤカシといったモノを題材にして、 主人公に用意された運命にどうやって立ち向かうか、 あるいは、自ら受け入れた運命… というものを描いたノベル形式のAVGです。 主人公には、常人にはない能力があります。 それが異形を見る力。 そして、自在に橋を出し霊力によって望む場所に行く…ということです。 物語は、田舎の学園を中心にした日常生活が描かれていきます。 明るく快活な性格を持つ主人公ということで友人が多いという設定です。 日常生活の部分は、ドタバタ系…とまでは行きませんが、 沢山の登場人物とのたわいもないやり取り、交流などが描かれていきます。 シナリオは共通パートを挟みながらも、前半でシナリオが分岐しており、 前半で出会う謎の異形の少女がキーポイントとなり、 主人公の運命が決められてしまいます。 それを運命だとは気付かない主人公は…… という流れでエンディングまで進みます。 3ルートあるシナリオの流れとしては、 それぞれが全く違う内容を描写しながらも、 1つのシナリオのネタの部分を上手くまとめているという印象を受けます。 1つのルートをクリアしただけでは、シナリオの核となる部分は見えてこず、 作品全体に配置された伏線を総合して考えることによって、 シナリオの核が見えてくる…という仕様になっています。 ルートに乗っても、ヒロインとの恋愛関係…という描写は全体的に弱く、 どちらかと言うと、シナリオの核となる話を主軸にしてシナリオが描かれていきます。 全ては「なみだ橋」に関することがキーポイントです。 そして「愛」を受け入れるが故の「死」…という傾向があります。 エロは、作中では完全にオマケの位置付けです。 エロシーンに突入する流れは強引であり、 突如として始まった…という傾向があります。 また、シーン数自体は多いのですが、それがオマケHというカタチであり、 作中に組み込まれているものではありません。 ヒロインは3人中2人がペタなので、そういった趣味の人向け…でしょうか…… |
絵…ですが、 立ち絵がありません。 全てが背景だけとテキスト処理…という紙芝居にもならない酷い有様です。 1枚絵の挿入箇所も少なく、1枚絵もエロ絵が中心ということで、 作品は常に背景ばかり見させられている…という苦痛があります。 システム面は、メニューでのカスタマー性は高いです。 しかし、フォントの大きさが小さく、 フルスクリーンだと問題はありませんが、 領域を広くとったデスクトップでウィンドウモードでプレイすると、 文字が読み難いです。 ボイスは、主人公以外のフルボイス仕様。 BGMは、流用っぽいですが、当たり障りのない音です。 |
プレイした印象は…… ゲームとしては、疑問に思える内容でしたが、普通の出来…という感じでしょうか? ゲームとするからには、 テキストとそれを補う演出が必要だと思いますが、 立ち絵が全くない仕様では、演出云々というレベルにまで到達していません。 確かに値段的な部分を見れば、 妥当なモノかもしれませんが、 背景だけを延々と見させられるだけでは、非常に苦痛を感じます。 1枚絵にしても、状況を描写する補佐的な役目を果たさず、エロを中心にした絵です。 エロシーンだけ紙芝居。他は小説の台詞を朗読してくれる機能のついただけ…という感じですね。 内容的な部分では、シナリオの核となる部分を中々描写しない… という部分において、かなり不親切だと感じました。 私の印象としては、シナリオのネタを予め知っている方がシナリオの説得性があると思うのですが、 実際は、全てのシナリオをプレイしてその伏線から熟考していかないといけません。 そのため、1ルートだけで飽きてしまったユーザーには、何を描きたかった作品なのか理解できないでしょう。 また、不要な描写が多く、シナリオがどういった方向に向かっていくのかも判断するのが難しい内容です。 特に日常的なパートは、薄いシナリオのネタをただ単に嵩増ししているだけであり、 こういった冗長されている部分が、ダラダラとした展開に感じさせます。 更に上記のように立ち絵のないことから、 テキストだけを追っていく作業をしている感じにさせます。 そのため、作品の世界観に入り難い仕様にしています。 文章にしても余分な記述が多く、テンポが悪いです。 シナリオは、最終的に向かう方向性としては、そこそこの面白さはあります。 謎の少女・るいによって導かれる運命。 それを運命とは思わずにシナリオは展開し、 最終的にはその運命に面と向かうようになる主人公の境遇が描写されます。 どのルートも、恋愛的な描写は薄いのですが、 ヒロインとの「愛」を貫くことによって、「運命」を受け入れる主人公… というのが見せ場になるでしょう。 値段的にまだ安い…ということが判断材料に左右される作品です。 最終的な方向性としては悪くないものの、 それを完全否定するかのうなチープな作品仕様が打ち勝ってしまっている感じを受けます。 もう少し、「作り込んでいる」という意気込みが欲しいと思います。 値段が安い。 しかし、それに伴って安直な作品を提示されても……と思うのですが…… |
2006/07/17 |
「なみだ橋をわたって」 〜〜柏倉春留ルート〜〜 子供の頃に出会った「橋」 異形を子供の頃から見えるようになった主人公は、 その橋の意味も知らずにその橋を渡った。 そして、現在。 少女の姿をした異形「るい」が何かを訴えかけている… 柏倉春留の死の予感と勘違いをする主人公。 刻限が迫っていることを「るい」から知らされる主人公は、 柏倉春留と恋人になる。 しかし、実際に死が迫っているのは主人公の方だった。 そして、刻限を迎え…… という流れ。 まぁ、ほとんどネタを書いてしまったが(汗 ラストは、「なみだ橋」の意味が語られた。 その意味を知ることによって……なんだけど。 死についてのテーマっぽいけど、ネタの部分がそれだけしかないし、 何より面白くない。 柏倉春留と結ばれるのも、これだと単なる同情心から来ているようなモノだ。 柏倉春留の主人公に対するツンデレっぽい対応は愛情の裏返しと思えばいいだけなんだけど、 主人公が柏倉春留に対する愛情は感じられない。 シナリオは、ネタの部分より、日常生活が中心に描かれいるし、 そういった部分は、ハッキリ言えば不要パートであり、単に冗長されてるだけ。 文章も簡潔さがなく、読んでるとイライラする。 余計な説明、余計な見解が多く込められた文章であり、 シナリオの核がどこにあるのか判りにくい表現をする。 起伏もないし、登場人物に切羽詰ったものも感じない。 緊張感もない。 ダラダラとテキストを読む作業をしているだけ。 小説であれば、そこそこは面白い内容かもしれないが、 明らかにゲームに不向きな内容である。 そもそも、ジンマリした単純なネタを引っ張り過ぎで、 シナリオの核となる部分の贅肉を削ぎ落とすと、 ラストの部分で十分な内容でもある。 一応は、完結した内容ではあるが、この程度のネタで満足できる人がどれだけいるのか…… という感じ。 でもまぁ、「最果てのイマ」に共通するものは感じるよ。 ネタはイマイチ。ダラダラ読ませる。 絵による演出を無視した紙芝居以下のビジュアル面。 最低限、絵による描写ぐらいはやってくれないとな。 いくら定価6000円といっても高いよ。9000円にしなかったのは正解だけどね。 せいぜい2000〜3000円が妥当な値段。 |
「なみだ橋をわたって」 〜〜育ルート〜〜 雨の中で拾った少女・育。 彼女は記憶が無くなっている。 ある日、育が猫だということに気付く主人公。 しばらくして……主人公の知らない昔の記憶が甦る。 家で、見つけた1枚の写真。 そこに写っているのは、祖父と祖父の妹。 育がその写真を見ると、主人公を祖父の名前で呼ぶ。 育は祖父が飼っていた猫だった。 祖父に会いたいという気持ち、恨んでいるわけでもないが、思いが捻じ曲がり、 主人公を襲う。 主人公の中に眠る祖父の魂。 主人公が最終的に選んだ道は…… という流れ。 ほとんど、最後まで書いてしまいましたが(汗 このルートは別段悪くはなかった。 まぁ、良くもなかったけどね。 育の祖父に対する思い。 その魂を引き継ぐ主人公は、育と生きていくことを望んで橋を渡る…というんだけどね。 シナリオの流れ的には大分良かったかな。 でも、不要なパートは多いし、相変わらずダラダラしたものを感じるのがマイナスだな。 それと、これは仕様なのだが、ビジュアル面がホント駄目。 立ち絵皆無で、背景絵ばかり見させられるのはかなりの苦痛を感じる。 シナリオ的には、伏線が各ルートに散りばめられていて、 そのピースを集めれば、シナリオの核となる部分がわかる… という仕組みのようだ。 今回は、祖父の部分において、 るいの存在が明らかになった。 橋の意味は、柏倉春留のルートに書かれていたけど、 いまいち理解できない部分もある。 |
「なみだ橋をわたって」 〜〜結城小星ルート〜〜 陰陽師の家系である結城小星。 主人公と同じ異形を見る力を持つ。 そして、異形を見ることの出来る主人公に興味を持つ。 そして、謎の少女・るいは、結城小星に近づけばろくな死に方をしないと主人公に忠告する その場に現れた結城小星は主人公を心配するが、 主人公は自分の迷っている気持ちを悟られないように結城小星にキスをする。 結城小星と付き合うようになり、 主人公の操る「なみだ橋」を結城小星に見せる。 その力を見た結城小星。 陰の力を持つ結城小星は、陽の力を持つ主人公と対決しなければならない……運命を知る。 異形を「なみだ橋」に送り込んだ主人公に対して結城小星は、 主人公に斬りかかる。 …という流れ。 まぁ、悪くはない流れだった。 これまでのルートで、ある程度のシナリオの核となる部分と、ネタの部分を把握しているせいか、 大分面白さは出てきた内容になった。 正直、ネタがわかっていないと、 最初のルートをプレイしたときのように戸惑いばかりを受けてしまう。 この場合、ある程度のネタバレを知っている方が作品を楽しめると思う。 最終的には、るいの忠告を受け入れる形になって終結する。 それが、主人公の結城小星に対する「愛」のカタチの返答なのだろう。 |
「なみだ橋をわたって」終了 最初は意味不明のシナリオで、何を描きたかった作品か理解できませんでしたが、 最終的には楽しめました。 主人公は、 異形を見ることが出来る能力と、 なみだ橋を操る能力 を持っています。 これは、主人公の祖父が持っていた能力で、主人公はその祖父の魂を内に秘めています。 謎の少女・るいは、主人公の祖父の妹に当たる人物で、 彼女の助言は、祖父の魂を守るために主人公を助けようとしているのでしょう(多分) なみだ橋自体は、正直不明な部分があるのですが、 人の涙にかかる橋…ということで三途の川にかかる橋… だと言いたいのでしょうか? 主人公自身は、橋を渡りきることなく心に思い描いた場所へテレポートする力…として利用しています。 るいが度々現れるのも、なみだ橋の本来の使われ方をしていないことに対する忠告… もあるのでしょうかねぇ… 終わりに近づけば、るいの話していることもハッキリしてくるのですが、 これは主人公が死に近づいているためですね(多分)。 るい自身が死屍たる存在であり、なみだ橋の傍にしか存在できない異形… ということを考えても、 るいが見えるようになったのは、主人公が死に近づいていったため…と判断するのが正しいかと… |